――お金は関係ない作家か、お金をちゃんともらうプロか、みたいな。
緒方 結局映画というのは産業なんだなと。それこそ石井さんがいみじくも言ったけど、「チケット1枚売ったらそれで500円入ってきてラーメン1杯食える、これが自主映画なんだよ」というのは全くそのとおりで。映画が成立するのはスクリーンと別に、窓口でお客さんから1500円もらって、そこで成立するという考え方もあるじゃないですか。自分はやっぱり産業として社会に貢献していって、その中でプロとしてお金をもらうということが大事なんだなと。
――緒方さんは結局『逆噴射家族』に付かなかったんですね。
緒方 僕は付かなかったです。僕は俳優で出てますね。石井さんは僕を欲しかったんでしょうね。準備の時も手伝ったりして、現場もエキストラに毛の生えたような俳優で何日か行ってますけれども。あの辺から石井さんとは、監督と助監督みたいな関係とは距離を置き始めたようなところはありますね。
20代、30代はCM、テレビディレクターとして活動
――その後、緒方さんは映画からしばらく離れるんですね。
緒方 自分がやれることは何だろうと思った時に、助監督としてやっていく、もちろんそれもあるんだけれども、時代はバブルに片足突っ込み始めていましたから、仕事は来るようになるんですよね。一時期はコマーシャル会社に籍を置いて2~3年、コマーシャルは助監督はないですから制作の下っ端として働いたりした。そういったところで自分の演出技術を売ってお金に換えていくということをやってみたかったんでしょうね。だから、自分で名刺を作って、いろんなところに「よろしくお願いします」とハガキを出すと、1社か2社来るわけですよ。それをやるようになりました。
――それはそれで楽しい作業ではあったんですか?
緒方 そうですね。どこかで「映画はもういいや」みたいな気持ちにはなってましたね。自分が映画として、例えばシナリオを書いて、どうしても描きたい世界観があるみたいなことではなくて、求められて…例えば、ホンダの新しいバイクが出たら、そのバイクをかっこよく撮るみたいなことがCMじゃないですか。そういうことをプロとしていろいろ考えたりすることのほうが自分に向いているんじゃないかなと思っていたこともあったので。全く興味はないけれどもPRをしていく、そういうことが実は映像のプロなんじゃないかなと。
