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クレーム対応は「瀕死の母を思い浮かべて…」? 印象を良くする“声の使い方”の秘訣

『督促OL 修行日記』より #19

2021/03/07

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書, 社会, 働き方

note

督促で結果を出している人の特徴とは?

 コールセンターにはお客さまと話している交渉を録音して後で聞き返し、改善点を見つける「モニタリング」という業務がある。

「うるせえ!」「馬鹿野郎!」などと罵倒され、情けなく応対している自分の声を聞きながら、そのヘタレさに絶望しつつ今後のスキルアップに活かすのだ。

 私たちコールセンターで働くオペレーターにとっては、「声」だけがお客さまとの接点になる。督促で結果を出している人やクレーム対応が巧みな人は、言葉遣いとともに、声の使い分けがとても上手なのだ。

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©iStock.com

 度々登場する先輩のK藤さんは、遅れが発生してまだ日が浅い「初期延滞」のお客さまには、ものすごく高い声で督促する。口調も若干砕けていて、

「お支払い日のお知らせでご連絡しましたぁ~」

 と、女性らしい柔らかな声だ。

 でも、延滞日数が延びるにつれてK藤さんの声のテンションは落ちていく。「長期延滞」のお客さまとの交渉は、完全に落ち着いた低めのトーンになっている。

「お支払い日のお知らせで、ご連絡させていただきました」

 しっかりと敬語を使った硬めの話し方になり、本当に同じ人なのか!? と思うくらいの変わりっぷりである。

相手に合わせて声を使い分ける

「初期延滞」のお客さまにはついうっかり入金を忘れている方も多い。まずは気を悪くさせないよう軽い調子でお願いをした方が入金のお願いに従ってもらいやすい。しかし「長期延滞」は支払いが遅れている自覚がある人が多く、軽い調子で電話をしたらなめられてしまって回収ができない。少し緊張感を持って聞き入れてもらう必要がある。

 たとえば、飲食店の対応に不満があって、「ちょっとどうなってんのよ!?」と呼びつけたら、ものすごい美人や超イケメンの店員さんが出てきてしまったとする。するとなんだか緊張して、言いたかったクレームも言いにくくなってしまったりしないだろうか(私だけ?)。