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78歳店主が営む“地元の人気店” 中崎町の中華料理屋で「350円のラーメン」を頼んだらホッとした!

B中華を探す旅――中崎町「八番」

2021/04/12

genre : ライフ, グルメ

note

豚肉玉子イタメは“意外な味”だった

 それにしても、厨房で忙しそうに動いているご主人は気難しそうに見え、サポートをする奥様も口数が少なそうではある。果たして、話など聞かせてもらえるのか。

 だが、豚肉玉子イタメが出てきたタイミングで声をかけてみたところ、奥様からは予想外の答えが返ってきたのだった。

「おかあさん、僕、東京から来ました」
「そう? ありがとうございます。東京はどちら?」
「詳しいですか?」
「ええ。東京出身。入谷っていうところ」

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 なんと、東京出身者であった。聞けばご主人も赤羽に住んでいたらしい(詳しい話はのちほど)。奥様とも、そのころ出会ったのだという。

 いきなり意外な展開に驚かされたわけだが、料理の味もまた意外ではあった。

 店の雰囲気からして、漠然と濃いめで大雑把な味を想像していたのだが(イメージでものを判断してはいけないぞ)、豚肉玉子イタメは意外なくらいにあっさりと上品な味つけだったのである。続く酢豚もやさしい味だ。

地元から信頼されているお店

 なお13時半ごろだったので、一般的なランチタイムは過ぎている。にもかかわらず、店内には人が絶えない。ひとり帰ったらまた別のひとりが入ってくるという、リズミカルなペースがキープされているのだ。

 20代の女の子が、母親らしき女性と入ってきたりもしたのでビックリしたが、そんなところからも、地元から信頼されていることがわかる。

 それにしても、続いて登場した餃子や唐揚げに舌鼓を打ちながらビールを空けていたら、あっという間に酔ってしまいそうな気がしてきた。やばい。早く話を聞かないと、へべれけになってしまう。そこで勇気を出して、ちょうど手が空いた様子のご主人に、お話を伺えないかと声をかけてみた。

 
 
 

「いいですよ。俗にいう『文春砲』の一員さんですか?」

 意外やフランクでシャレが効く。外見的には、ラッパーのSEAMOの数十年後という印象。つまり若々しいのだが、「そろそろ限界なんだけども」とおっしゃるのでお聞きしたところ、78歳なのだとか。いやいや、そうは見えないなぁ。