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2021/04/12

genre : ライフ, グルメ

「だって、わしらの年代はな、いわゆる60年安保の年だから。それで、60年安保が18のときだ。70年安保が28だ。その間中、ほとんどもう、あれだな。ヤング諸君はな、一番モテないのはノンポリといわれた連中だ。だから、なにかせないかんのよ、男は。女の子にモテるには。歌声喫茶に行ってもなにをしても、左というか、そっちのほうの歌ばっかりでね。演歌なんか、どうでもええ話でな。セクトがむちゃくちゃあってね。もう3人寄ればセクトだからね」 

 聞いてみなければわからないことは、いろいろあるものだ。ところで、なぜ店名が「八番」なのだろう?

 

「その理由はね、八という数字はね、永遠というか、永久という意味がね。印象が強かったのは、60年代のアメリカの『ベン・ケーシー』というテレビドラマ。あれに記号がいっぱい出てきて、8を横にしたやつ(∞)、永久、永遠とかいうのもあった(注:オープニングで「男、女、誕生、死亡、そして無限」というナレーションとともに黒板に記号が書かれた)。それを見て、8という数字をなにかのときに使おうと思ったんですよ。なるべくやめないように、長く、永久に続けられるようにとか、自分の足にタガを履かせたといえばいいかね。とにかくね、やめやすい仕事よ、この仕事は。入りやすい仕事でもあるし」

“締めのラーメン”に頼んだのは……

 まさかの「ベン・ケーシー」由来。おもしろすぎてつい引き込まれてしまったが、最後はやはり“締めのラーメン”だろう。話が途切れたタイミングでお願いすると、ほどなく見た目にも透明感のあるラーメンがテーブルに置かれた。

 鶏ガラのスープはあっさりとしていて、とてもやさしい味だ。麺も硬すぎず、柔らかすぎず、何十年もこのスタイルでやってきたことが、ひとつひとつの味から伝わってくる。

 だから、ホッとする。最後に頼んで本当によかった。

 
 

「昭和のラーメンということでね(笑)」

 しかし、こういう味に触れてしまうと、やはり「あのこと」が気になってしまう。後継ぎは、いないのだろうか?

「うん。なし、なし。いまはそういう時代と違います。この中華業界がね。3Kです。それと、いま、中国から人が来ないから、大きいところは大変ですよ。料理人がおらんの。中国の人は少々無理いっても働いてくれるけども。日本人は働かない」

 

撮影=印南敦史

INFORMATION

 八番
 大阪府大阪市北区中崎西1-6-36
 営業時間 11:30~23:00
 定休日 日曜日
 
 ラーメン 350円
 鶏からあげ 600円
 酢豚 600円
 餃子 250円
 豚肉玉子イタメ 600円

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