ついに“サクラ投稿”を募集
同「通達」で、ついに吉田氏は社内に向けてこんな募集を始めた。
《落書き版(原文ママ)に書かれた内容をデジタル化して、それをファンの人に成り代わってあらゆるメディアに次から次へと投稿していく、これを副業でやってくれる人を募集する。固定給制度でスタートは月給10万円。毎月一度報告をしてもらい、貢献度によって11万円、12万円、・・・、20万円と上がっていく。DHCに愛社精神があり、是非やってみたいと思う人は応募せよ》(2020年8月20日「通達」より)
「つまり、消費者の方が書いた口コミを、あたかも自分が商品を使用した口コミであるかのようにSNSやほかの口コミサイトに投稿せよという社員への“サクラ投稿”の指示だったのです。投稿先として、Instagram、Twitter、Facebook、YouTubeなどのSNSのほかに、『アットコスメ』などの大手口コミサイトも対象として指定されました」(A子さん)
この募集に対して、当初は「多くの従業員が『こんな“グレーな業務”には関わりたくない』と目を伏せていた」(同前)という。
上司からの指示
「だから数人が応募したとしても、そんなに大規模な動きにはならないだろうと思っていました。なので、その後に会長から送られてきた『通達』を読んで驚きました」(同前)
《なんと応募者が二百数十名に達した。しかもその大半が、報酬は辞退したいというのである。会社の窮状を見て一灯をともしたいという愛社精神に満ちた社員がまだこれほどもいたのかと、小生はずっしりと重い申し込み用紙を抱いて落涙した》(2020年8月25日「通達」より)
DHC社員は約3200名。なかには会長がいる本社から遠い店舗や工場に勤めている社員もいる。なぜこれほど希望者が集まったのか。
実際に“サクラ投稿”をしていたというDHC社員のBさんが語る。
「もちろんこんな業務に関わりたくはありませんでしたが、コロナ禍で家計が逼迫していたこともあり、私は8月20日の『通達』で案内されていた通り、月給10万円スタートの有償で引き受けることにしました。
しかし応募があまりなかったのか、ある部署では上司から『無償でやると手を挙げなさい』と言われ、無償で引き受けた社員も多かったと聞いています」