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近年、観光に目覚めた奈良の街

 そんな奈良を、先日久しぶりに訪ねる機会があった。街は私がホテル経営をしていた2000年代の初めとはうってかわって昨年初めまではインバウンド客で大変なにぎわいをみせていた。そんな背景からいくつかの有名ブランドホテルが奈良に進出し始めた様子をみようと訪ねたのだ。

 市の中心部、県営プールの跡地に森トラストが事業者となって昨年7月に高級外資系ホテル「JWマリオット・ホテル奈良」(158室)がオープンした。また、大仏で有名な東大寺の北側、旧奈良監獄跡地には星野リゾートが中心となってホテルや簡易宿所のほか、複合商業施設などを整備し、24年のオープンを目指すことも話題になっている。旧イトーヨーカ堂の跡地でも新しい観光型複合商業施設ミ・ナーラがオープン。街の様子は様変わりの様相をみせている。

(写真はイメージです) ©️iStock.com

コロナ禍によって大阪・京都が沈み

 だが、せっかく観光に目覚めた奈良の街にもコロナ禍は襲い掛かっている。以前はインバウンド客でごった返していた三条通りや東向商店街も客は疎らで閑散としている。奈良公園の鹿も少なくなった観光客の鹿せんべいに不満げな表情をみせる。

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 昨年の県内のビジネスホテル稼働率は大幅減となり、平均稼働率は32.7%までに落ち込んだ。ところがこの年、奈良は万年全国最下位の地位を抜け出し、全国46位と一つ順位を上げることに成功した。最下位はなんと大阪の32.5%。0.2%の差だが、前年は全国5位だった大阪がなんと最下位に転落したのだ。そして、どうやっても観光では勝つことができなかった京都が、奈良のすぐ上の45位(34.9%)に沈んだのだ。

 さて、皮肉なことにコロナ禍によって奈良は大阪、京都に肩を並べることができた。

 リニア中央新幹線の名古屋、大阪間のルートは、奈良を経由する案が有力だとされる。街のにぎわいを整備し、ネックであった交通の利便性が整うとき、古都・奈良が京都とは違った魅力を発信し、京都を凌駕することが現実になるのだろうか。

奈良 ©️iStock.com

 あをによし 奈良の都は咲く花の にほふがごとく 今盛りなり

 万葉集で歌われた奈良の都の隆盛を待ちたい。