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うつ病で入院中、「みんな待ってます」というお見舞いの一言がいちばん嬉しかった

マンガ『うつ病九段』に学ぶ“うつヌケ”のヒント

2021/04/29

source : 文春コミック

genre : ライフ, 読書, 医療, ヘルス

note

 

規則正しい日課で生活リズムを取り戻す

 うつ病の場合、生活リズムを整えるのが治療の大原則。毎朝6時起床、ラジオ体操、そして朝食……という規則正しい生活が日課となります。しかし、不眠のため朝が辛い先崎さんにとって、この規則正しい生活が苦行となります。また、本や雑誌を読んでも、活字がまったく頭に入ってきません。

 

「極悪期」は必ず終わる。生理的反応を見逃すな

 この最悪の時期、先崎さんは兄からの「必ず治ります」というLINEメッセージのみを希望に生活していました。生きる屍のような「極悪期」が過ぎると、身体が回復してくる兆しを感じ始めます。久しぶりにシャワーを浴び、さっぱりした後に食事をすると、麻痺していた味覚も戻ってきました。そして、あの生理的欲求がムズムズと──。「エロ動画が見たい…」。

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お見舞いには「みんな待ってますよ」の一言を


 ようやく入院生活にもなじんできた先崎さんは、それまで制限していた見舞い客との面会を始めます。懐かしい顔に会って楽しい半面、元気な人や声の大きな人と接すると、疲れてしまうことに気づきます。先崎さんの場合、いちばん嬉しかったのは「みんな待ってます」という一言でした。

 

周囲の世界がモノクロから原色へと変わる瞬間

 少しずつ回復を実感するようになった先崎さんは、アマ初段の看護師と対局をします。自分は本当に将棋が指せるのか、試してみたかったからです。ところが、実力的には決して負けるわけがない相手に、大苦戦を強いられます。一方、テレビを見ていると、いままで白黒だった周囲の世界に色がつき、フルカラーになるという経験をします。治療の成果が現れてきました。

 

うつにとって散歩は何よりの薬 

 「うつにとって散歩は薬のようなものなんだ」。精神科医の兄の言葉を信じ、先崎さんは毎日、毎日、散歩を続けます。1日3時間くらいずつ、ひたすら外苑周辺を歩き続けました。気力が目覚めてきた先崎さんは、病院の廊下でシャドウ・ボクシングも始めます。本格的にうつとの闘いに向き合うようになったのです。

 
 その後、一時外出の訓練を経て、先崎さんは無事退院することができました。入院期間は1カ月。先崎さんにとって人生で最も辛く、最も長い1カ月が終わったのです。シャバに戻った先崎さんですが、現役復帰への道はまだまだ険しいものが……。
 

 続きは単行本『うつ九段』でお楽しみください。

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うつ病九段

克夫, 河井 ,学, 先崎

文藝春秋

2020年4月24日 発売

うつ病で入院中、「みんな待ってます」というお見舞いの一言がいちばん嬉しかった

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