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「いじめに該当しない」川口市が法廷で繰りかえしている“異様な主張”の中身とは

調査委員会による報告書では、いじめを認定していたが…

2021/04/21

 埼玉県川口市立中学校に通っていた元生徒・加藤健太さん(仮名・18)が在学中に不登校になったのは、サッカー部のグループLINE外し、部員からの暴行や嫌がらせ、部活顧問による体罰をめぐる、学校や市教委の対応が不適切だったためとして損害賠償を求めている訴訟。4月14日、さいたま地裁(岡部純子裁判長)で証人尋問が行われた。

裁判では一転していじめを認めない主張

 被告側の証人で、元市教委職員(現在は市内の中学校校長)が「記憶にない」「答える立場にない」などの証言を繰り返した。また、この元市教委職員は調査委員会の事務局にもいたが、「母親が納得いかないので報告書の内容が変わった」との発言もあった。原告側は「虚偽であり、調査委の信頼を根底から覆すもの」として容認できない姿勢を見せた。

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 訴状によると、健太さんは中学入学まもなくサッカー部に入ったが、すぐに連絡網だったグループLINEから外された。また、部活の練習中に襟首を後ろから掴まれ、首絞め状態で引きずられた。2年生のときには、部員が健太さんの自宅や自転車をスマホで無断で撮影し、LINE上にアップして中傷をした。LINEの中でも部員がなりすまし行為をして、からかいや誹謗中傷を受けた。不登校になったのは合計で4回。第1回の口頭弁論(2018年9月12日)で、市側は法廷で卒業証書を渡そうとし、原告側の怒りをかっていた。

 実は被告側は、当初いじめを認めていた。川口市いじめ問題調査委員会は2018年3月、健太さんのいじめに関する調査報告書を公表した。それによると、

1)サッカー部のグループLINEから外された

2)サッカー部の練習中に、肘で顔を叩かれるなどした

3)サッカー部の練習中に、ある部員からTシャツの襟首を後ろから引っ張られ、首が絞まった状態で倒された

4)健太さんの自宅で遊ぶことを断られたサッカー部員4人が、健太さんと交際中の女子生徒の自宅に行き、周辺で騒いだ

5)健太さんに対して、LINEで中傷をしたり、彼の自宅をスマホで無断で撮影し、LINE上にアップした

6)LINEの中で、他の部員からなりすましによるからかいや誹謗中傷を受けた

 など、8点のうち、2)以外は、いじめと認定した。また、不登校についても、いじめが「主たる要因」と位置付けた。

 こうした調査結果が出たが、裁判になってからは、川口市は一転していじめを認めない主張を繰り返している。

母親の対応を問題視するかのような発言を繰り返す

 4月14日に証言をした市教委の元職員は、2016年12月から本件を担当していた。健太さんが中1のときで、2回目の不登校をしていた時期だ。「部員に襟首を掴まれた件」について、母親は「息子は襟首を掴まれ、引き倒され、引きずられていた」などと証言したが、主尋問で元職員は「この件はすでに解決済みでした」と回答、反対尋問でも「加害生徒とその親が謝罪をした。そのため、いじめではないと学校が判断し、市教委にも報告があった」と述べた。その上で、「健太さんが先に蹴ったかどうかで揉めていた。結局は、母親が納得しなかった」と、母親の対応を問題視するかのような発言を繰り返した。