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 いじめによる不登校の場合、「いじめ防止対策推進法」による「重大事態」にあたるとされたため、市教委は調査委員会を設置した。2018年3月には最終報告書を公表した。それによると、調査委は、訴えのあった中から8件を検討。うち、7件をいじめと認定した。また、不登校の原因についてはいじめが主たる原因であり、ほかにも学校の対応への不信感、サッカー部顧問の不適切な指導などをあげた。

母親が報告書を見せられたのは、公表前の1回だけ

 この件について主尋問で元職員は「最終報告書の内容と中間報告書の内容は違います。健太さんの卒業が近いこと、不登校が長期化したことに母親が納得しなかったから」と答え、あたかも母親が納得しなかったために、報告書の内容が変わったかのような証言をした。

 反対尋問で原告側は「学校側は、加害生徒と保護者が謝罪をしたことで『いじめに該当しない』としたのか?」と聞くと、元職員は「市教委がどう判断したのかわからない」と答えた。「学校の判断を是認したのか?」との問いには、「顧問と母親が話し合い、『指導しなくていい』との話になった。そのような学校側の報告を理解した」と述べた。

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 元職員は母親の対応が影響していじめと判断しなかったかのように言ったが、「法のいじめの定義には、母親が『指導しなくていい』というかどうかは、要件に入っているか?」と聞かれて、「入っていない」と答えている。さらに「母親が納得しないから最終報告の内容が変わったというのは、委員に確認をしたのか? それとも推測か?」との問いには、「私の推測です」と答えていた。

裁判が行われているさいたま地裁 ©渋井哲也

 このやりとりについて、岡部裁判長も「そう推測するのはなぜですか?」と質問した。元職員は「中間報告から内容が急に変わったわけではありません。少しずつ変わっていったのです。母親が納得しないので、調査委に持ち帰ったのです。そして最終的に卒業式が近いので、ほぼ母親の言い分にそった内容になった」と答えた。これに対して、母親の証人尋問(主尋問)では「『納得がいかない』とは言っていません。報告書を見せられたのは、2018年2月。公表前の案。1回だけです。何度も見せられていません。調査が終わったので確認してほしいと言われたときだけです」と反論した。

顧問とのやりとりノートには…

 健太さんは2016年5月から9月まで部活の顧問とノートでやりとりをしていた。部活内のいじめを顧問に伝えたところ、“ちくった”ことにされたために、顧問との間で、何かあった場合、「ノートに書けばいい」と言われたことがきっかけだった。作成日は不明なものの、顧問への手紙も2通、ノートに挟まっていた。そのうちの一つが以下のものだ。

●●先生
友達と親友のちがいってなんだと思いますか?
僕は親友ってかんたんにうらぎったりうそついたりやなことしないのが親友だと思います。
友達とかいなくなってもいいけど、部活の時とかクラスいるときとか
わざとわる口言われたり関係ない人達に僕がわるいとかうそ言いふらされたりするのはやです。(以下、略)

 顧問からの返事も書かれていた。

友達は楽しい時かに一緒にいる人。でも親友は、自分が困ったり悩んだりしている時に一緒に考えてくれたり、助けてくれたりしてくれる人だと私は思います。

部活顧問とのノートのやりとり

 同年9月15日、健太さんは自傷行為をした。母親の証言では「カッターで手首を切っている」。