虚飾に満ちた愛人生活。貢いでくれる男性を替えながら、5年ほど続いたという。
「ついに契約してくれる人もいなくなったので、持ち物を全部売って、家賃8万のワンルームマンションに引っ越しました。それで仕事しないといけないなと思って、就労支援センターに2年間通って、パートの事務職をはじめました。時給1000円くらいなので、フルで働いて月に15万くらいですね」
その後は徐々に庶民感覚を取り戻し、低収入ながらも安定した生活を送っていた。しかし、そこにコロナ禍が襲ってきた。
「3年間働いたんですけど、コロナで出勤調整と時短で週4日勤務になって、手取りが8万円くらいになってしまって……。その3カ月後には週2回になるって言われて、もう辞めます、と」
新型コロナで仕事もない。頼れる人ももういない。そこで見つけた仕事が「チャットレディ」だった。パソコンの前で、インターネットで繋がったお客さんとビデオ通話をするという、風俗のような仕事だ。
「この年齢でもそれなりに稼げるからと聞いて、藁にもすがる気持ちでやってみたんですよ。最初は顔を出さなくても大丈夫という話だったんですけど、顔出しして裸にならないとお客さんが見に来ないって言われて……。もうここまで来たらやるしかないと思って、全部出して、お客さんからの過激なオーダーにも応えるようになりました」
現在はチャットレディの収入でなんとか暮らしているという。
「最近はマッチングアプリもやってるんですよ。愛人が欲しいというよりも、普通のボーイフレンドというか、話相手が欲しくて……。いま、お金がないことよりも、周りに誰もいないというのが一番つらいです。独りでいると昔の良かったことばかり思い出してしまいますから……」
中田さんはかつて先輩から「ホステスは一生できる仕事じゃないから、辞めたあとのことを考えないとダメ」と何度も忠告されていた。
「でも、あの頃の私はそんなの聞く耳持たなかったんですよね……。いまの若い子はしっかりしてるから、言われなくても大丈夫だと思いますけど。コロナで銀座の灯が消えてしまえば、逆に私のような人生を送る女もいなくなるのかもしれませんね」
一見、華やかで高収入な水商売の仕事だが、夜の蝶たちの何割くらいが、幸せな将来を迎えられるのだろう。