昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「郷里の娘を呼んでやってください」 元ホステスが語る銀座最後のキャバレー「白いばら」伝説

2021/01/10

genre : ライフ, 娯楽, 社会

 銀座最後のキャバレー「白いばら」をご存知ですか?

 2018年1月10日に惜しまれつつ閉店したこのキャバレーは、1931(昭和6)年創業、1951年に「白いばら」の店名でキャバレーとして開店し、銀座三丁目で60年以上にわたり、銀座の夜を彩り続けていました。

白いばら外観 ©郷里の娘

「あなたの郷里の娘を呼んでやってください」

 そもそもキャバレーとはどんなお店を指す言葉なのでしょうか。その答えは“ホステス”と呼ばれる女性による接待に加えて、大箱で、ダンスフロアとステージがあり、バンドがいて、ショータイムもある接待飲食店というもの。日本のキャバレーは戦前のカフェーをルーツとし、戦後日本の経済成長とともに栄え、1970年代に最盛期を迎えたといわれています。

 白いばらもそうした特徴を備えた華やかなキャバレーでした。店内には入ったことがなくても、銀座を歩きながら見かけた昭和レトロな外観や、「あなたの郷里の娘を呼んでやってください」と書かれた日本地図の看板が気になっていたという方はいらっしゃるのではないでしょうか。

店頭の看板では在籍しているホステスの源氏名が出身都道府県別に張り出されていた。地図の上にあるキャッチコピーは「女性は素人 あなたはもてる 夜の大人の遊園地」 ©郷里の娘
ホステス向けの求人案内。月収が事実なのかは働いていた私たちも知らない ©郷里の娘

 店内に入ると、外観からは想像できない光景が広がっていました。赤を基調とした内装、シャンデリア代わりに並ぶ電球とその光を増幅させる鏡、あちこちに置かれたばらの造花……。ダンスフロアの鏡張りの壁には「キャバレーは楽しい! 今も昔も青春のキャンパス 夢・恋・愛」というキャッチフレーズが掲げてありました。

 建物は開店時から建て替えなしの木造3階建てで、1階と2階が客席というつくり。吹き抜けの下にはダンスフロアが。そして中2階にはステージが設けられていました。

 営業時間は毎日18時から23時30分まで。20時と22時からは8人のダンサーチームが登場する20分間のショータイムです。宝塚を思わせるほどの本格的なレビューショーで、このために席を予約する常連さんもたくさん。ショー以外の時間にはステージでバンドの演奏があり、生演奏でのカラオケもできました。

ショー中の記念撮影コーナー。毎回1組だけ撮影することができた。後ろの壁にある日本地図は夏の恒例「甲子園優勝校当て」。当てたお客さんにはワインボトルサービスも ©郷里の娘

白いばらの華やかなショーの数々

 白いばらには四季折々の風物詩とも呼べる数々のイベントがありました。たとえば6月は「開店記念」で、店名にちなんだばらの苗をお客さんにプレゼント。10月の「料理教室」ではホステスがお客さんに手料理をふるまい、11月の「文化祭」では仮装大会……。イベントに合わせた手作り感あふれる店内飾りは、お昼のうちにボーイさんたちが用意していました。

 年始には営業初日に鏡割りがあり、升酒が振る舞われます。挨拶回りを終えたお客さんたちで開店から賑わい、遅い時間にも新年会の二次会など途切れることなくお客さんが入ってくる。そんな光景が年明けはもっぱら定番でした。ショータイムには、ダンサーさんたちが着物や金銀の衣装で登場する、一年のなかでもとりわけゴージャスで華やかな新春ショー。閉店の日が刻々と迫っていた2018年の1月にも、数日間のためにショーが用意され、惜しみない豪華さでお客さんを楽しませていました。

関連記事