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「郷里の娘を呼んでやってください」 元ホステスが語る銀座最後のキャバレー「白いばら」伝説

2021/01/10

genre : ライフ, 娯楽, 社会

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18歳から50代まで…出身地だけでなくホステスの年齢層も幅広かった

 私たち「郷里の娘」は、白いばらで働いていた元ホステス3人のユニットです。閉店直前となる2010年代にそれぞれ3~5年ほど白いばらで働いていました。

 白いばらには当時200人以上のホステスが在籍しており、お店に出勤しているのは毎日100人ほど、金曜日や年末など繁忙日には150人ほどの日もありました。

 ホステスは18歳から50代までさまざまで、白いばら一本で働いている人もいましたが、お昼の仕事をしていたり学生だったり、本業が別にある人が圧倒的に多かったと思います。働きはじめたきっかけは紹介が多く、友人や先輩、姉妹、昔ホステスとして働いていた母親の紹介で入店したという人も。

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 入店まもない新人ホステスは胸に白いばらを付けていました。続々と新人が入店しているというお客さんへのアピールに加え、この印はホステス同士のコミュニケーションにも役立ちました。水商売が初めてというホステスも多く、伝票の付け方からお客さんと話すときの心構えまで、さまざまな姿勢を先輩ホステスたちから教わることができたのです。

新人ホステスだけでなく、初回来店のお客さんにも白いばらがプレゼントされた ©郷里の娘

 新人だった私たちを何かと気にかけてくれた先輩ホステスさん。あるときお客さんから、そんなお姉さん方の一人が「ホステス同士の喧嘩の気配を見つけたら芽を摘むのよ」と言っていたと聞きました。このように、ホステスにとってキャバレー白いばらは働きやすく、そして、安心して働けるお店でした。クラブなどではありがちな罰金やノルマがないといった制度面に加えて、先輩ホステスや黒服と呼ばれるスタッフたちが居心地のいいお店を作ってくれていました。だからこそ、「あなたの郷里の娘を呼んでやってください」という謳い文句を店頭看板に掲げるほど、全国各地出身の女の子が集まったのではないでしょうか。

セット料金表とメニューが各卓上に置かれ、明朗会計が売りだった ©郷里の娘

突然の閉店発表、そして……

 そんな白いばらも2018年1月に閉店を迎えることに。

 私たちホステスに閉店が知らされたのは2017年の10月のことでした。あまりにも突然で、皆が驚いていたことを覚えています。情報が解禁されてからというもの、「一度は行ってみたかった」という新規のお客さんが増えていきました。白いばらで過ごすひと時を楽しんでもらいながらも、いままでお店に通ってくれた常連さんに残り少ない日を楽しんでもらうため、徐々に新規のお客さんはお断りすることになっていきました。

 閉店を目前にした年末からは連日満席。ホステスの数を大きく上回るお客さんで座席はいっぱいで、ホステスはいくつもの席を受け持ち、補助の丸椅子に座って接客していました。