ヤクザの携帯番号「ゴロがよい理由」
携帯電話に対する規制が強くなる前には、こんなエピソードもあった。
現在の携帯電話の頭の番号は、「090」や「080」などで始まり、その後ろに8桁の番号が続き、計11桁となっているが、普及し始めたころは「030」で始まり、以下は7桁で計10桁だった。爆発的に普及したことで、またたく間に電話番号が不足してしまったため、「090」の後に8桁という現在の形となった。
携帯電話が普及し始めたころには、次のようなやり取りがあったという。指定暴力団幹部が振り返る。
「自分が携帯電話を使い始めたのは、平成の時代に入った1990年代のはじめのころ。できれば番号は同じ数字が並んでいるような、ゴロが良い番号にしたいと思うのは、誰もが同じだろう。携帯電話を購入する際に事前に連絡しておいたら、電話会社の担当者から、『こんな並びのよい電話番号でいかがでしょうか』と提案してきた。そこで、提案された番号にした」
上場企業の株式を購入して株主として株主総会に乗り込んで質問攻撃を繰り返し、経営陣に揺さぶりをかけて違法な資金の提供を受けていた元総会屋の男性も、あまり見かけないような“並びの良い番号”を取得していた。
「この番号は、携帯電話会社の方から『覚えやすいものを』と勧められた。我々のような仕事は特別扱いされるのが好きだから、電話会社の方が気を使ったのだろう」
総会屋は1980年代の終わりから90年代の初めのバブル景気のころに大きな勢力を維持していたが、その後の警視庁や東京地検特捜部の摘発が相次ぎ、現在はほぼ絶滅状態となっている。だが、今でもNTTドコモの利用規約には契約できない反社会的勢力として規定されている。
前出の元総会屋は「当時、提示された携帯電話の番号を今も使い続けている」と話している。
こうした証言の通りに、実際に一部の暴力団幹部や総会屋、右翼団体幹部たちの番号を聞くと、珍しい並びのよい番号で驚かされるケースも多い。
例をあげると、「090-◇◇〇〇―□□▽▽」といった番号だ。前出の指定暴力団幹部は「並びのよい番号にしているのは、うちの若い衆は数字を覚えるのが苦手なのが多いから。だから並びのよい番号が必要だ」と冗談めかして強調している。
しかし現在は“ヤクザとケータイ”をめぐる状況も、様変わりしているのが実情だ。