「暴力団幹部は防弾仕様の車に乗っている」というイメージがあるかもしれないが、それは一部の最高幹部だけ。通常は一般市民と同じ、高級車に乗ることになる。
では、ヤクザはどんなクルマに乗っているのか。かつて一般社会では、トヨタ・クラウンに乗ることが「社会的な成功者の証し」というイメージがあり人気だった。車はステータスシンボルであることは暴力団社会も同様だ。
そして、愛用される車にも流行がある。バブル景気が華やかなころは、ベンツの高級車が流行していたが、近年はさらに大きく変化しているという。(全3回の1回目)
流行はアメ車からベンツへ
昭和の時代からの業界を知る指定暴力団のベテラン幹部が語る。
「ヤクザの間では昔はアメ車が流行していた。リンカーン・コンチネンタルとかキャデラックに乗っていることがステータスだった。その後、昭和の終わりから平成に入りバブルの好景気になるころには人気の車はベンツになった。トヨタのセンチュリーやクラウンも人気があった」
別の指定暴力団の古参幹部もアメ車に思い出があるという。
「最初はアメ車に乗っていたが、乗り心地は悪かった。その後はベンツに乗り換えた。新車で1000万円ぐらいだったか。(暴力団同士の交際である)義理事とかゴルフに出かけるという時は、若い衆に運転させた。プライベートな用事では自分でも運転したが、やはり国産の方が運転をしやすいし楽だ。ベンツに乗るのは見栄だな」
「いまは高級なベンツなどに乗っているヤクザは見かけない」と語るのは、暴力団犯罪を長年にわたり捜査してきたベテラン刑事だ。
「最近は背が高いワンボックスタイプばかりだ。特にトヨタのアルファードが人気。事情を聞くと、『まず乗り心地が良い。車高が高く室内が広いため、車内での着替えも楽だ』ということだった。自分が知っている幹部のワンボックスタイプの車のシートは総革張りで、豪華にグレードアップさせていた」
一般社会でもセダン人気が陰り、車高が高く室内が広いワンボックスタイプの売れ行きが好調なのと、暴力団社会の人気の変遷も同様のようだ。
それでも、「セダンタイプが好みというヤクザもいて、一部ではトヨタのレクサスに人気がある」と語る別の指定暴力団幹部もいる。暴力団社会では総じてトヨタ車の人気が高いようだ。