ヤクザは自由に車を買えない
ステータスシンボルとしての車は欠かせないアイテムとなっているが、現在、暴力団組員は自由に車を購入できない。暴力団排除条例が全国で整備された2011年10月以降、社会活動からの暴力団の本格的な締め出しが始まったためだ。
自動車販売店が顧客に車を販売するにあたって、自ら定めた暴力団排除条項に基づく約款を交わすこととなっているのが通例だ。多くの場合、販売にあたって契約を交わす際に「反社会的勢力に属していますか」というチェック項目がある。もし暴力団組員が「反社ではない」と虚偽の申告をすると、私文書偽造や詐欺容疑などが適用され逮捕されることになる。
車の購入で暴力団幹部の逮捕が相次ぐようになると、“裏道”から暴力団へ車を供給する悪質ディーラーが登場することになった。警察当局の捜査幹部が解説する。
「事件が相次ぐと相手側も新たな手口を考えるようになってきた。本人名義にすると事件となってしまうので、名義を変えて購入しヤクザの幹部に車を提供するディーラーも出てきた。こうした購入方法についてもかなり捜査した。しかし、次第に手口が巧妙になってきて追い切れていないことも多い」
記者がヤクザに名義貸して…
ヤクザと車をめぐっては、2016年12月、フジテレビの30代の元記者が車の購入をめぐり暴力団関係者に名義を貸していたことが発覚。大きな批判を浴びることとなった。
元記者は問題発覚以前、警視庁記者クラブに所属し、暴力団事件の取材を担当。2013年4月ごろに取材で知り合った暴力団関係者から高級飲食店で20回ほどの接待を受けていた。
フジテレビは当初、「当社記者の不適切な行動について、視聴者の皆様に心よりおわび申し上げます」とコメント。元記者を休職1カ月の懲戒処分としていたが、この問題は記者倫理が問われただけではなかった。
年が明けた2017年3月、その元記者が別の男性が購入した乗用車を自身が使うと偽って運輸局に届けていたとして、警視庁が元記者と名義貸しを依頼した男性を電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑で書類送検し刑事事件に発展した。
名義貸しを依頼した男性は山口組系暴力団と関係があり、車は暴力団組員も使用していたが、2人の関係は車の名義貸しだけではなかった。元記者が相手に約230万円を貸していたことも明らかになった。
元記者は社内調査に対して、「越えてはいけない一線を越えた自分が甘かった」などと説明したという。元記者は略式起訴され、罰金30万円の略式命令が出されて幕引きとなった。暴力団関係者の男性は罰金40万円だった。