老若男女を問わずゴルフを趣味としている人は多い。企業経営者らにとっては、ゴルフ場は「大人の社交場」でもある。それはヤクザの世界でも同様だった。
実際にゴルフを愛好する暴力団幹部も多い。首都圏で活動している指定暴力団幹部もその一人だ。
「ゴルフは早朝の5時、6時に早起きして出発しなければならないが、晴れた日などは青空とグリーンの芝生がきれいで、ゴルフ場に行くと気分が良い。自分もよくプレーした。
身内だけでプレーする場合は賭けていた。いわゆる『握る』というやつだ。一打につき何万円とか、池にボールを入れてしまう『池ポチャ』でいくらとか。負けたらその日のプレー代をすべて負担するといったこともあった。ゴルフコンペのような形でカタギの事業家の人たちとプレーする場合は親睦会のようなもので、とても重要な交流の場でもあった。カタギの人たちとは賭けていない。純粋にゴルフは楽しかった」(全3回の3回目。#1から読む)
「プレー代は要りませんので、お帰り下さい」
その暴力団幹部が「ゴルフは楽しかった」と過去形で表現するように、現在、暴力団など反社会的勢力に属していると事実上、ゴルフ場でプレーを出来ないのが実態だ。
前出の暴力団幹部が、「すでに何年も前から、暴力団排除条例などで反社(会的勢力)はダメということなった」と打ち明ける。
「ある時、ゴルフ場に(同じ暴力団組織の)身内だけで集まってプレーを楽しんでいたら、別の団体の幹部たちもいたため、軽く挨拶を交わした。すると、そのグループに警察がやって来てプレーを中断させられて帰らされた。それを見て笑っていた」
ところが、昼飯を食べてプレーを再開したところ、その暴力団幹部のグループのところにも警察とゴルフ場の支配人がやって来たという。
「支配人は『プレー代は要りませんので、お帰り下さい』とのことだった。恐らく反社データベースのようなものをゴルフ場が独自に作っていて、自分たちのことが(反社と)分かったのだろう。客が何者なのか分からなければ警察に通報できない。その後に一度だけ、別のゴルフ場に出かけことがあった。すると、同じように『お帰り下さい』だった。もう今は、ゴルフはやっていない」(同前)