山口組内の政治力学に利用されたゴルフコンペ
「カタギとの重要な交流の場」であったゴルフコンペが大きな批判の対象となることがあった。
「週刊新潮」が2008年10月9日号で、「大物『暴力団組長』誕生日コンペ&パーティーに」との見出しで報じた記事が大きな波紋を広げた。
テレビの歌番組などの常連で、誰もが知るベテランの人気歌手たちを多く集められるほどの実力を備えた暴力団組長の「大物ぶり」が話題となった。記事ではゴルフの後にパーティーが開かれ、集まった人気歌手たちが持ち歌を披露したことも記載されていた。
記事の登場人物の「大物暴力団組長」とは、山口組の5代目時代から最高幹部に名を連ねていた後藤組組長、後藤忠政のことを指していた。
後藤は武闘派であるとともに経済力も備えた経済ヤクザとして名が通っていただけに、この情報は暴力団業界、芸能界に瞬く間に広がった。ゴルフコンペに参加していた歌手たちは釈明に追われた。
問題は暴力団組長主催のゴルフコンペに人気歌手が参加していたというだけでは終わらなかった。後藤は、山口組本部の定例会を欠席していたにもかかわらず、ゴルフコンペを開催していたと山口組内で問題視され、除籍処分となり組織を去ることとなったのだ。
当時、山口組は6代目となっていたが、後藤は山口組の5代目時代からの最高幹部だった。
当時を知る警察当局の幹部は、「6代目体制となり管理が厳しくなったことで、一部の直系組長の間では不満が募っていたのは確かなことだった」と指摘している。こうした背景もあり、後藤は神戸市の本部での定例会を欠席したとみられた。
ゴルフコンペ開催を理由とした後藤の除籍処分に反発した山口組の直参組長らが、連名で抗議文を出したが、抗議人に加わった組長らにも処分が下った。ゴルフコンペ開催をめぐる動きが、山口組内の政治力学に利用された形だった。