北朝鮮の挑発でTHAAD配備賛成派が増えた
進歩派の重鎮として知られ、金大中、盧武鉉元大統領時代に統一相を務めた丁世鉉(チョン・セヒョン)ハンギョレ統一文化財団理事長は、北朝鮮との対話路線を説いてきたひとりで、9月に行われた「韓半島平和フォーラム」の席でこう喝破している。
「制裁と対話を並行する? これは『雨降る月夜』、『熱い氷』と同じ表現だ。圧迫を感じて対話をする? それはレトリックとしては可能だが、政策としてあり得ない。私たちは、国際社会の制裁に中ぐらい従って、対話に重きを置かなければいけない」
やはり、盧武鉉元大統領時代に統一相を務めた李鍾奭(イ・ジョンソク)世宗研究所首席研究委員もハンギョレ新聞のコラム(9月10日)で、
「文在寅政府は、今からでも厳重な北朝鮮核の状況において韓国が果たすべき役割を直視して、制裁便乗から抜け出して、主導的・創意的外交に向かって険しい道に進まなければならない」
と説いている。
これは、進歩派内の分裂という意味でさらに踏み込んだ「南南葛藤」のようにも見える。
世論はというと、やはり、北朝鮮への対応策は、「平和的・外交的解決策を探す努力を続ける」ことを望む人が66%と大勢だ(ギャラップ、14カ国を対象にした北朝鮮の核への認識調査、9月20日~10月1日)。ただ、一方で、「軍事的解決策が必要」と答えた人も34%いた。これは、他国と比べると、米国の25%、欧州各国の8~10%台、そしてロシアの4%と比べるとはるかに高く、日本とパキスタンの49%に次いで高かった。
「南南葛藤」が再び浮き彫りとなったTHAAD配備問題は、今年1月には賛成51%反対40%だった。それが、北朝鮮の相次ぐ挑発に臨時配備した後の8月には、賛成が72%まで増えた。
北朝鮮の挑発がこのまま止まなければ、韓国の世論も大きく動く可能性は否めない。
そうなれば、「南南葛藤」はさらに熾烈になるだろう。
前出の全国紙記者が語る。
「韓国は北朝鮮との朝鮮戦争を経験した休戦中の分断国家であり、敵が同胞という複雑な環境を抱えています。北朝鮮への思いもそれだけもつれていて、混乱している」
北朝鮮の核・ミサイル問題は国際社会の今までにない強い制裁が進む中、米朝対話か米国による軍事オプションかという二者択一の土壇場に近づいている。
文大統領は朝鮮半島の危機に伴う「南南葛藤」がピークに達した時、果たしてどんな選択をするのだろうか。
「犀の角のように独りで歩む」には、情勢はあまりにも混沌としている。