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コロナで二週間の休業も「未来が見えた気がしました」 店主が背中を押された常連の“ある言葉”とは

『シェフたちのコロナ禍 道なき道をゆく三十四人の記録』より#後編

2021/05/13

source : 文藝出版局

genre : エンタメ, 読書, グルメ, 社会, 働き方

「吞めば気持ちもほぐれてきますから」

 話す時は一対一。みんなと一緒だと話せないことって案外多いので、個人対個人で、相手の目を見て話します。スタッフは人生の時間を、この場所(店)で遣ってくれている人たち。僕は彼らとも信頼を築きたいし、築くには「話を聞く」が八割だと思っています。

 職場で話すと仕事の延長になってしまうので、営業前、ファミレスなどお店以外の場所で。ビールでも軽く一杯、吞めば気持ちもほぐれてきますから。

※写真はイメージです    ©iStock.com

 ちなみに仕事の後、吞みに行って話すことはほぼありません。疲れて頭が回らないから、言いたいことも出てこないし、言われたことも頭に入らない。フレッシュな時間のほうが、言葉がふと心に入っていくんです。

 丁寧に、淡々と、すべきことをちゃんとする。そうして土地に根を張る稲や葡萄と同じように、「高太郎」は渋谷の街に根づきたい。

 9年前、渋谷に店を出したのは、ライブや芝居、映画など劇場が多い街だから。観劇後に寄ってもらえる店になりたかったんです。今日の舞台は役者がよかったとか、どう感じた? などの余韻を楽しむ場所って、飲食店でしょう? そういう店があることは、街にとってもまたいい灯りがともるということ。

 今回、人がいない渋谷を初めて見ました。駅ビルも休業して閑散としていたなか、それでも「高太郎」にはお客さんが来てくれた。あったかい灯りの店である限り、長く可愛がってもらえるんだなとあらためて感じました。

 僕らは、グルメサイトの点数が高いことより、その人の頭の一番初めに思い浮かぶ店でありたい。これからもそこを目指していきます。

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