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昨年も立て続けに襲われた

 2019年の9月頃のことだ。古川幹部が渡世から引退するのではないかという噂が立っていた。その後、年内限りで引退するのではないかという内容に変わり、同時に筆者は違う筋から、次のような話を耳にしていた。現場となった居酒屋を年内で閉めて、移転先の物件を探しているというのだ。前記した通り、今回の事件は古川幹部の店の前で起きた。正確には、古川幹部の息子が経営する居酒屋である。

 移転の理由のひとつとして考えられるのは、古川幹部の息子が経営する居酒屋は、六代目山口組サイドに、あまりにも知られ過ぎていたこともあっただろう。この店は、古川幹部の自宅から歩いて5分ほどの場所にあり、本人にとっては確かに便利ではあった。一部では阪神尼崎の繁華街や商店街に面しており、賑わいを見せている場所のように報道されていたが、実際は違う。商店街の中心部より一本路地に入っており、死角になりやすい立地だった。だからこそ、古川幹部は同じ場所で六代目サイドから、2018年3月と2019年7月の2度にわたって襲撃を受けたのである。

※写真はイメージ ©iStock.com

 それだけではない。まだ古川幹部が率いる二代目古川組が六代目山口組傘下にあった時、陣中見舞いへと訪れた六代目山口組最高幹部らを招いた際にもその店を利用している。その後、神戸山口組へと移籍し、しばらく経った頃に別の事件で六代目山口組傘下の組員が逮捕された時には、その所持品からその店の場所を書き記した地図のメモ書きが見つかったこともあったのだ。

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 今回の射殺事件に関する予兆もあった。熊本と札幌で神戸山口組幹部が2人続けて狙われる事件が起きていた。

「狙いやすさ」という意味では、頻繁に現れる場所が特定されているという事情も含めて、古川幹部がターゲットにされても、なんらおかしくはなかったのだ。

 一連の流れから見て、六代目山口組は分裂騒動に一気に決着をつける動きを見せていると言ってもいいだろう。仮に分裂騒動に終止符を打つために最終的な話し合いの場が設けられるにしても、その話し合いを優位に進めるには、絶対的な暴力という交渉カードが必要とされる。そのための「準備期間」が、今なのかもしれない。