「エビデンスなし」「十分な説明なし」で大阪案に飛びつく政府
では菅首相報道を見てみよう。面白かったのは読売新聞。3回目の緊急事態宣言の発令が決まった翌日、一面に社会部次長のコラムを載せた。そのタイトルは、
『政策転換 説明不十分』
政権に近いイメージのある読売だがさすがに呆れている様子。
《今回は酒類提供の飲食店や大型商業施設に休業を求め、イベントの無観客開催にも踏み込んだ。突然の大きな政策転換だが、国民に十分に説明されたとは言い難い。》
これだけではない、紙面をめくって3面では『政府、大阪案「丸のみ」』。
政府は今まで《酒を伴う飲食が主な感染ルートとみて、集中的に対策を取ってきた。実証調査などで安全が確認されたスポーツイベントは容認するなど、「エビデンス(証拠)」重視の立場だった。》
しかし今回は、
《イベントが感染拡大をもたらすというエビデンスなしに、十分な説明もせず吉村氏の「人流抑制案」に飛びついた。》
吉村氏の強硬姿勢を「自らの失政隠し」(内閣官房幹部)と言いつつも、吉村案に乗ったのだ。このフラフラ感。
これはもう「自助」ではない
読売がこの日何度も言っているのは、菅首相は大きな政策転換をしたのに説明が不十分という点だ。3面には自民党の閣僚経験者の苦言を載せた。
「感染対策と経済の両立という大方針の転換にもかかわらず、首相が指導力を発揮した形跡が見られない」
この恐ろしさをよ~く考えてみよう。
対策の急転換によるしわ寄せを受けるのは現場だ。感染対策を徹底して時短営業をしてきた居酒屋であっても急きょ休業を求められ、正当な理由なく背けば罰則を科せられる(解説・信濃毎日新聞4月24日)。
これはもう「自助」ではなく「他罰」である。首相はスローガンを変えたほうがいい。
実は菅首相のちゃんと説明しない態度は他でも目立つ。
『日本の温室ガス削減 政治主導で新目標 「46%減」問われる実効性』(毎日新聞4月23日)というニュースがあった。
2030年度までに13年度比46%削減の新たな目標が決まったが、なぜ46%なのか。
《数字の根拠や内訳は示されなかった。産業や暮らしに影響するのに決める過程の議論も明らかにされていない。》(朝日新聞4月23日)
国民に直接影響があることがまたもおそろかに。