強烈なインパクト音を残し打球はバックスクリーン奥に吸い込まれていった。4月21日、本拠地ZOZOマリンスタジアムのファイターズ戦。岡大海外野手がファイターズのクローザー 杉浦稔大投手が投じた149キロストレートをフルスイングし、逆転サヨナラ本塁打を放った。マリーンズが逆転サヨナラ本塁打で勝利するのは01年のフランク・ボーリック内野手の逆転サヨナラ満塁本塁打以来、実に20年ぶり。日本人選手では97年の初芝清内野手以来、24年ぶりの快挙となった。1点ビハインドの最終回二死一塁。土俵際からの起死回生の一発はその瞬間、伝説となった。
熱烈なマリーンズファンは3点ビハインドの場面で逆転サヨナラ満塁本塁打を放った01年の奇跡を「ボーリックナイト」と呼び、長い間、語り継いできた。そして今、「ヒロミ(大海)ナイト」が誕生した。14勝8敗と大きく勝ち越した2021年4月においてこの試合は月間ベストゲームの一つとなった。
「どちらかがホームランを打って欲しいと思っていた」
不思議な縁だ。01年のボーリックナイトの対戦相手は福岡ダイエーホークス。相手陣営には井口資仁監督が3番セカンドでスタメン出場していた。
「あの日のことは覚えているよ。ホークス時代は外国人選手によく打たれた記憶があるなあ。ボーリックもそうだけど、D・メイとかね」と当時を懐かしそうに振り返る。
ちなみに松中信彦臨時打撃コーチは5番ファーストでスタメン出場。鳥越裕介二軍監督は9番遊撃でスタメン出場している。森脇浩司野手総合兼内野守備コーチも当時は内野守備走塁コーチ。「覚えているね!」と振り返る。スタメン捕手は城島健司氏だったがベンチには控え捕手として的場直樹戦略兼バッテリーコーチもいた。的場コーチはボーリックの印象について「得意なゾーンや苦手なゾーンを見極めるのが難しい選手だった。身長のある選手ではなかったけど長打力もあった。意外性のある選手」と評する。
井口監督は岡を信頼して打席に送り出した。前打者の吉田裕太捕手(結果はセンターフライ)と岡。今年、調子がよく長打のある2人のどちらかにホームランでこのゲームを決めて欲しいとの読みをもってベンチで試合を見守った。
「吉田と岡。2人のうち、どちらかがホームランを打って欲しいと思っていたら、その通りになった。つなぐ野球も、もちろん大事だけど、相手が信頼する抑え投手を出してきてのあの場面はなかなか繋いで逆転は厳しい。ここで勝つには一発だと思っていた。だから2人には『ホームランを打ってこい!』と言って送り出した。吉田もアウトにはなったけど、いいスイングでいい当たりだった」と思い通りの結果に表情を緩めた。
この逆転サヨナラホームランで忘れてはいけないのは一死走者ナシからしぶとく四球で出塁した藤岡裕大内野手の存在だ。
「ストレートのキレがある投手。手元でビュンと伸びる感覚でなかなか難しい打席。とにかく高めに手を出さないように低めを意識していた。ボールが散ってくれたことで四球を選ぶことが出来た。自分はとにかく後ろにつなぐ意識だった。(岡)ヒロミさんは長打力があるので期待をしていた」と言う。岡が打った瞬間は「ちょっと詰まったと思った」と同点のホームを踏むべく全力疾走。二塁ベースに到達したときに打球が消えていったことを確認した。「すごい。あれでホームランになるのだと驚いた」と驚きながら歓喜のホームインをした。