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「西麻布の2万円ディナーからコンビニコーヒーの生活に一転…」 “マッチングサービス”を起業した30代経営者が電通を4年で辞めた理由

森本萌乃さんインタビュー#1

2021/05/03
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「感覚の共有」は本こそできること

 20分間のビデオチャットは、提供した本やそのほかの本についてお互いの質問に答えていく形式ですが、「同じ本を読んだ」という共通項があると、初対面の気まずさが少なくて話が続くんですよ。特に、「いま読んでいる本、好きな本のジャンルは何ですか」「次の“積ん読”で狙っているのは何ですか」「今日お会いした相手におすすめしたい本は何ですか」というような質問はすごく盛り上がります。

「Chapters」の前に、本を仲介にしたリアルなお食事会を提供していた時期もあったのですが、その時はどちらかというと本の話よりも「お仕事何ですか」という一般的な話が多かったんですよね。オンラインになったいまは、ダイレクトに本の話が多くなりました。

 

──「Chapters」の強みはどこにあると思いますか。

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森本 マッチングアプリは「自分の目的にあった人と出会う」ことを目的としているので、現実の出会いと少し違う、目的へ最短距離で到達する使い心地に抵抗を感じる人もいると思います。でも、出会いの演出に「本」を挟む「Chapters」の場合、人と出会う前に本との出会いが待っているんです。「本を読みたいと思って入会したら、たまたま趣味のあう人と出会えた」というさりげない出会いができます。それって、すごくロマンチックだと思うんですよ。そういうロマンチックな出会いができる場って、ほかにないですよね。

 リモートワークやSNSでもそうですが、オンラインで自分の見せ方を頑張ることがしんどいと思っている人って、結構いると思うんです。

 それに、マッチングアプリの世界では、たとえ現実とかけ離れていようが、写真もプロフィールも「盛れる」子に人気が集まりますが、現実におつきあいしたいなと思う人って、「話し方が好き」とか、「一緒にいてなんか居心地がいい」とかデジタルマーケティングでは拾えない感覚が重要じゃないですか。この「感覚の共有」は本を挟むことで無理なく実現できるのかなと。

「Chapters」が広がることでロマンチックな出会いが増え、そして本を読む人が増えたら、きっと、世界はもっと輝くと思っています。

「ビデオチャットをした8割が連絡先を交換している」というデータがある

──「Chapters」で提供しているのはあくまで「出会い」です。カップル成立や結婚という「結果」を重視していないのはどうしてですか。

 

森本 「Chapters」が演出できるのは、「本屋さんで同じ本に手が伸びたことがきっかけとなって、そのままお茶に行く」ところまでなんです。どこにお茶しに行くか、どんな話をするか、どんな洋服で来るかは、私の範囲ではない。だから「Chapters」では、カップル成約率や結婚率などのデータを追っていません。

 ただ、「ビデオチャットをした8割が連絡先を交換している」というデータはあります。「本」って、たった20分話しただけで連絡先を教えたくなるくらい盛り上がれるアイテムなんですよ。これって、すごいことだな、と思っています。