「大事なのは、おとっつぁんがどう考えとるか、いうことや」
父親を意味する「おとっつぁん」という言葉を令和の永田町で使うのは、この人物だけかもしれない。その名は総務相・武田良太(53)。武田が「おとっつぁん」と呼ぶのは自民党幹事長の二階俊博(82)のことだ。
二階派の一員である武田。もちろん二階を前にしては居住まいをただし、「幹事長」と呼ぶが、自らの配下である若手議員などの前では二階との近さをアピールするためか二階を「おとっつぁん」と呼ぶ。
二階の威光を背景に、安倍政権において二階派枠で国家公安委員長として初入閣した武田。続く菅政権でも重要ポストの総務相に横滑りした。首相・菅義偉肝いりの携帯電話料金の値下げや、NHK受信料の値下げといった課題に総務相として取り組み、その都度ニュースになっていたから、最近になって武田の知名度は俄然上がった。
だがその人となりは、世間ではあまり知られていないのが実情だ。昨年から突如としてスポットライトを浴び始めた武田良太とは一体どんな政治家なのか。
永田町で「Tアラート」と呼ばれているのは…
「“Tアラート”が来てしまいました。すみません。ちょっと行かないと……」
まだコロナ禍になる以前のある夜。二階派の若手議員が、会食の相手にすまなそうにそう言い残して席を中座した。“Tアラート”とは武田からの「飲み」の呼び出しのことだ。二階派若手議員の間では、北朝鮮のミサイル発射の警告「Jアラート」になぞらえて、武田からの呼び出しが“Tアラート”と呼ばれていた。
「コロナ禍以前、武田大臣は毎晩のように若手議員を夜の街に呼び出していました。もちろん代金は全て武田大臣が支払います。そんな席で武田大臣は二階幹事長のことを『おとっつぁん』と呼び、二階幹事長との距離の近さをことさらにアピールしました。
若手議員を呼び出したところで、何か差し迫って話すべき話題があるわけではありません。しかし、毎晩のように顔を合わせることが大事だと大臣は考えておられるのでしょう。今は自民党と言えど少なくなった面倒見がいい議員と言えます」(自民党関係者)