知性の訓練をすべき
中野 それについては、也哉子さんはむしろ、樹木希林さんからすごい英才教育をされているのではないですか。『なんで家族を続けるの?』の中でも、家の中にはハサミが一個しかなかったとか、道具は一つの用途だけではなく、いろんなふうに使いこなすように鍛えられたことを明かしていますよね。
内田 放っぽらかして育ったんですけど。ただ、おもちゃは買ってもらえませんでしたし、洋服も中学に入るまで一度たりと買ってくれず、母のお友達の女優さんのお下がりをもらっては、Tシャツでさえも肩上げして着せられていました。
中野 物事を一面だけから見ない訓練というのが、知性の訓練だと思うんです。別解を考える。そういうことこそ、本来なら学校でやるべきだし、義務教育の中でたくさんできるといいと思うんですけど、なかなかできないんですよね。覚えるべきことがたくさん増えて、今の子どもたちは私たちの頃より大変だと思うけれど、でも思考の訓練というか、考える頭の体力みたいなものを鍛える時間があるといいですよね。
内田 そうですね。
中野 読書がその一助になると思います。この『なんで家族を続けるの?』を買えとは言いませんが(笑)。
内田 (笑)うまい! すごく自然な流れで宣伝しました。
中野 也哉子さんの絵本とか、いいと思います。
内田 結局、インプットをどれだけ持つか、ということでしょうかね。
中野 そうそう、まず、いろいろな人がどういう考え方をしているかを知るのも大事だから、インプットもすごく大事だよね。
子どもから「普通のお母さんがよかった」って言われているお母さんからの質問もありましたね。
普通じゃないって何?
内田 これ、面白いですね。ペンネーム「みっちゃん」さん。
Q.【40代女性より】私は普段からテンションが高め(元気がよい?)なのですが、子どもから「普通のお母さんがよかった……」と言われたことがあります。お2人にとっていわゆる「普通」とは、どんなことだと思われますか?
内田 『なんで家族を続けるの?』の帯に、「私たちは“普通じゃない家族”の子だった」というセンセーショナルなコピーが書かれているではないですか。これは編集部の方が一生懸命考えてくださったんですけど、私、最初にこれ見たとき、ちょっと待って、普通って何よ? と思ったんですね。
中野 (笑)引っ掛かるよね。私は普通だよっていう気持ちもある。
内田 だからこの帯が挑発的で、逆にいいなと思った。きっとこれをご覧になった方は、え、じゃあ普通って何? 私って普通なの、どうなの? ってちょっとプロボークするだろうということを狙って、こういうコピーになったんだと思うんです。
中野 普通とは、多数派をいうのでしょうね。右利きの世界の中では右利きが普通というように。
内田 中野さんは、マジョリティではないということですか。
中野 マジョリティではないです。
内田 そのマジョリティというのは、感覚ではなく統計的に?
中野 統計的にも出るよね。例えば、離婚している家庭のほうが少ないですが、うちの親は離婚しています。それから、母には子どもよりも大事にしているものがあった。複雑な話なので詳しいことは省きますが、そういう家庭というのはマイノリティでした。
内田 ああ、そうね、多くの家庭では子ども第一になりがちですもんね。
中野 そういう特殊事情が他にもいろいろあったので、マジョリティではない、すなわち普通じゃない家庭だったと思います。