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コロナ禍で浮かび上がった「いのちの尊さ」を現代アート作品で感じ取る

アート・ジャーナル

2021/05/02

 愛知県の海に面した町の駅近くに、碧南市藤井達吉現代美術館はある。

 こちらで現在開かれているのは、「いのちの移ろい展」と題した現代アートのグループ展だ。

アートが「いのち」を考えさせる

 出展しているのは10人のアーティストで、全員にある共通点が認められる。いずれも派手で声高に主張してくるようなタイプではないのだ。それでいて、どの作品もどこか明るく肯定的。生命の起源やいのちの輝きを感じさせるもの揃いである。

 それはそうだ。今展は昨今のコロナ禍で、いのちの大切さを日々思い知らされている私たちに、いのちについて改めて考えるヒントを提供せんと、企画されたものだから。

 郷土が誇る芸術家・藤井達吉の絵画《静物・花》は、象徴的な作品と感じられる。一見暗く沈んだ画面に描かれた花は、鈍い光を発している。対面していると、抑えた色彩がじわじわとこちらの視覚に染み入ってくる。控えめなれど、この絵はしっかり息づいている。そう気づけたときの、たしかな手応えがたまらない。

 イケムラレイコの《黄色の中をそっぽ向いて》には、作品世界の時代背景や人物の詳しい来歴が描き込まれているわけじゃない。それなのに、そこはかとない郷愁を感じさせるのは不思議だ。

イケムラレイコ『黄色の中をそっぽ向いて』1995年、油彩・カンヴァス、個人蔵

 地元・愛知県を拠点とする近藤佳那子と安藤正子は、それぞれ《おままごと》《おりがみ》と題して、ともに少女の姿を儚く繊細に描いた絵画を見せてくれる。

安藤正子「おりがみ」2018年、木炭・木炭紙、作家蔵

 野見山暁治の絵画《なに食わぬ景色》や、渡辺英司のインスタレーション《蝶瞰図》は、かたちと色が織りなすリズムが快い。

野見山暁治《何食わぬ景色》2018年 油彩、カンヴァス 
渡辺英司《蝶瞰図》2012-21年--蝶図鑑、ガラスケース 

無理ない計画のもと鑑賞を

 同美術館は昨年来、増改築工事に向けて全館休館中となっていた。ところが少々着工が延びたことから、しばらく館を開ける猶予ができた。昨今のご時世に積極的な施設の運用はなかなか難しいところもあるが、アートに触れる楽しさを忘れてしまわぬようにと、可能な範囲で稼働している。

 無理のない計画のもと、作品群が放ついのちの光に触れてみたい。

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