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ベイスターズは諦めないチームになれるか…ホークスとの戦いはいつも「成長」が試される場だった

文春野球コラム ペナントレース2021 共通テーマ「ソフトバンク×横浜の思い出」

2021/06/03
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もう一つ、私にとって忘れられない出来事

 実はもう一つ、この前日にも私にとって忘れられない出来事がありました。

 3対2、ベイスターズのリードで迎えた7回、ホークスの攻撃は2死満塁。(ここでも)柳田選手の打球はゴロでセンター方向へ。ところが、このケースでは内野手より前に位置していた二塁塁審に鋭い打球が当たってしまいボールデッドに。試合は中断し各走者が許された進塁は一つのみ。記録はセカンド内野安打で柳田選手の打点は1。打球が塁審に当たらなければセンターへの2点タイムリーになった可能性があるため、ホークスの工藤公康監督が審判に確認を求める場面がありました。実況していた私は、慎重に言葉を選んで描写。解説の平松政次さんが「打球に審判が当たった場合、このケースはボールデッドなのですね。審判が言うのだから間違いないでしょう」と発してくださったことで、考えを整理でき、ディレクターが探し示してくれた野球規則の該当部分を読み上げました。

 ところが後日、あるスポーツ紙のベテラン記者担当のコラム内でこのプレーが言及され『テレビ中継は審判の判定が間違っていると断言した』と書かれてありました。はっきり確認はできませんが、記者の方はtvk以外の放送をご覧になっていて耳にした断言だったと想像します。残念な思いでした。私達tvkのテレビ中継がもっと存在感を示さなくてはと誓うと同時に、その時たまたま見聞きした情報だけで全てを一元的に伝えてしまうと困惑する人がいるかもしれない事を、肝に銘じました。 

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三浦大輔 ©tvk

 2015年はベイスターズにとっても転機でした。満を持して筒香嘉智選手が確固たる軸になってくれた年。拡充される投手陣との相乗効果も生まれ、日毎にチーム力が上がりました。翌2016年にCS初進出を果たすと、翌2017年にはついにリーグ3位から勝ち上がっての日本シリーズへ、相手はホークス。

 横浜スタジアムで再会できた前出の山口さんに「ついに、この日が来ましたね」と声をかけられました。私はもちろん何の努力をしたわけもなく、応援するベイスターズが積み重ねた成果ですが「以前、遥か遠くに見えた舞台がこんなにも早く訪れるとは」と、格別の思いが体に沁みわたります。日本一こそ届きませんでしたが、チームは存分に戦ってくれました。

 多村さんは、先日tvkの放送席に解説としていらした際「今のベイスターズはかつて勝てなかった頃のチームとは意識も戦力も違う。けがをした選手たちが戻り体制が整えば、いい戦いはできるはず」と話してくれました。

 交流戦の通算勝率が12球団トップ(前回まで.629)のホークスに挑む戦いは、どんな時もベイスターズにとって成長の証が試される場。

 今日も、忘れられない、誰かに伝えたいエネルギーが溢れる戦いになります様に。

多村仁志さんと筆者 ©吉井祥博

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