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藤浪晋太郎と北條史也、同期の2人がお立ち台に立つ日が来れば、阪神は本当に“優勝してまう”

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/06/08
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「あかん阪神優勝してまう!!」――。スポニチにこんな“お好み焼き”のようなコテコテの見出しが躍ったのは4月19日付の東京版1面だった。

 連日、タイガースのニュースが紙面を埋め尽くす関西版ではなく、基本的にはジャイアンツなど関東球団の話題や大谷翔平、芸能などフラットな視点で1面を作っている東京スポニチに掲載されたのが興味深い。「リーグ首位を独走」「矢野政権最長の7連勝」「112勝ペース」というトピックの数々が「何やら関西が……いや阪神がすごいことになってるぞ」と東京の編集局をざわつかせたのか。その紙面が、売店やコンビニに並び始めると反響も生まれ始め、ネット上では「きょうのスポニチの見出しw」「朗報」「デイリーかと思ったら……スポニチかい」など掲示板に複数のスレッドが立つなど、かなり盛り上がっていた。

©スポーツニッポン

連日「ヒーロー原稿」を執筆する日々だが……

 あの1面から約1カ月半が経った。球団史に刻まれるほどの開幕ダッシュに成功したチームは、今もリーグ首位の座を堅持し“あかん優勝してまう”状態をしっかり維持している。今では阪神ファンのツイッターのタイムラインには、勝利時の「とらほー」に加え、活躍した選手への喜びを爆発させるコメントに「#あかん優勝してまう」を添えたツイートが多く見られるように。ついには「虎バン主義」を掲げる朝日放送(ABC)が優勝へ向けた特番「虎バンスペシャル #あかん優勝してまう」を放送することも決まった。

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 すべては、16年ぶりとなるリーグ優勝への渇望はもちろん“変革期”を迎えたチームに寄せられる期待の表れに他ならない。昨年、能見篤史、藤川球児、福留孝介と象徴的なベテランが揃ってタテジマを脱ぎチームは一気に若返った。何と言ってもドラフト1位・佐藤輝明の想像を遥かに超えていく飛距離とパフォーマンス。近本光司、糸原健斗の1、2番コンビが好機を作り、大山悠輔、そしてジェフリー・マルテ、ジェリー・サンズの中軸がおもしろいように走者を還していく。両助っ人が一発を放った際に行うパフォーマンス「ラパンパラ」(マルテ)と「ハッピーハンズ」(サンズ)はベンチ前の“名物”として定着。投手陣も青柳晃洋、秋山拓巳ら主戦として自覚十分の先発が安定し、勝ちパターンを担う岩崎優、ロベルト・スアレスもフル回転し、白星を量産してきた。

 筆者は、今年で担当記者となって12年目。2010年から追いかけてきて、これほどの快発進は記憶にない。記者席から見ていても4月、5月はやることなすことすべてうまくいっていた。甲子園に響く六甲おろしを耳にしながら連日「ヒーロー原稿」を執筆する日々。それでも、番記者として筆が進む環境にいながら、一抹の寂しさを感じていた……。あの2人が輪に加わっていないからだ。

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