文春オンライン

「逃げたら教師になれないよ」と脅されて… 元捜査一課刑事が明かす「闇バイト」「現金プレゼント」で人生の落とし穴にハマる人の‟共通点”

佐々木成三インタビュー#2

2021/05/10
note

悪質な「現金プレゼント」応募者はカモリストとして悪用される

―― いわゆる‟情報弱者”の人はだまされやすいわけですね。

佐々木 カモリストに載ってしまった人にはDMがきて、名前、住所、電話番号、銀行口座などの個人情報を送るように言われます。「残念ながら今回は抽選に外れました……」とお金やプレゼントは配られず、「いい儲け話がある」などといった甘い言葉で、商材詐欺や投資詐欺に勧誘されるのです。

 

 LINEでも、「有料スタンププレゼント」「友だち追加するだけで現金プレゼント」「毎日スタンプを送るだけで平均日給2万円」などといった詐欺まがいの勧誘が横行しています。友だち登録するだけで、商材詐欺や投資詐欺のメッセージが毎日送られてきたり、怪しいゲームアプリをダウンロードさせられたり。それが子どもたちに拡散したこともありました。

ADVERTISEMENT

―― プレゼント企画のSNSやLINEアカウントをフォローしたり、DMを送った人のリストが悪用されることもあるのでしょうか。

佐々木 詐欺にだまされやすい「カモ」のリストとして、別の犯罪グループに売り飛ばされます。1万5千人分のリストが57万円ぐらいで売られたりしていますよ。一度集めたカモリストは、アカウント売買なども使って、どんどん怪しい犯罪者グループに出回ります。指1本でとんでもない人生のリスクを背負うことになるのです。

 

 こうした現金配布、プレゼント企画を装った詐欺グループが怖いのは、お金がほしい人の欲望にどんどんつけ込んでくるところです。「お金を振り込むために必要です」と言われると、お金がほしくてたまらない人は、身分証明書、銀行の口座番号、クレジットカードの番号さえも、簡単に教えてしまう。

 SNSで、現金プレゼント企画のアカウントをたくさんフォローしていたある大学生は、おいしい副業や投資に関するメッセージが毎日送られてきました。さらに、やりとりしていた20代前半の女性と実際にホテルのカフェで会うことになり、借金を投資で稼いで返した成功談を聞かされたそうです。その後に誘われた投資家たちのパーティにも参加した大学生は、彼らのことをすっかり信用してしまいました。そして、車を転売する投資をはじめたものの、2ヶ月で勧誘者側と連絡がとれなくなり、やっとだまされていたことに気づいたのです。