わいせつ行為、強制性交、自撮り性被害をはじめとした児童・生徒が狙われる性犯罪事件が後を絶たない。未成年を狙った性犯罪で特に増えているのは、SNSやオンラインゲームを使って巧妙に子どもを誘い出すケース。スマホやゲームが生活の一部となっている子どもたちは、家にいても親の目の届かないところで危険にさらされているのだ。

 では、どのような手口に子どもはだまされるのか? 子どもを守るために親にできることはなにか? 元埼玉県警察本部捜査一課の刑事で、デジタル犯罪防止アドバイザーとして活動している佐々木成三さんに、子どもを狙った性犯罪の実態と防止策について聞いた。(全2回の1回目。後編を読む)

(撮影:文藝春秋/山元茂樹)

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犯罪目的の男を「やさしいお兄さん」と思う子も

―― SNSやゲームを利用した犯罪被疑者の犯行動機は、「未成年との性交目的」が70%。佐々木さんの著書にあるこのデータに驚きました。しかも、だまされる子どもたちの多くは、犯人を悪い人だと思っていないんですね。

佐々木成三(以下、佐々木) 「2019年(令和元年)の犯罪情勢」によると、SNSが原因で事件に巻き込まれた未成年の被害児童数は過去最多の2095人になりました。過去5年間で26.8%増えています。子どもが犯罪者と接点を持つのは、おっしゃる通り、犯罪者だと思っていないからです。それどころか、金品をくれる人、相談に乗ってくれるやさしい人、一緒に遊んでみたい人といったプラスの理由で、相手に会ってしまう子がほとんどです。

――性犯罪者は、具体的にどんな手口で子どもをだますのでしょうか。

佐々木 たとえば、小学6年生の女の子が誘拐された事件は、成人男性がオンラインゲームのチャットで女の子に話しかけたことがきっかけでした。2人が毎日一緒にゲームをするうちに、その女の子は男性のことを「ゲームが強くて学校や家での悩みも聞いてくれるやさしいお兄さん」と思うようになっていった。そして、「一緒にゲームをやろうよ」と誘ってきた男と公園で待ち合わせて、車で連れ去られました。