ディープな世界にハマりやすい危険性も
―― 子どもを持つ親のネットリテラシー教育の重要性を感じます。
佐々木 僕たちが子どもだった時代はすべてアナログで、何をするにしてもまずは自分の頭で考えていました。わからないことがあれば、親や周りの大人に聞いたり、自分で経験を繰り返しながら覚えたものです。好きな女の子の自宅に電話1本かけるだけでも、「父親が出たらどうしよう」と心の準備をしたり手順を考えて、うまくいけばそれが成功体験になったわけです。
でも今の学生たちは、ネットの世界ですべて完結しがちです。興味関心があることを調べるのも、人とのコミュニケーションも、彼氏や彼女を探すのも、すべてスマホひとつでできますから。ネットの世界には嘘も多いですけど、情報をフィルタリングする能力もないので、うわさ話を信じたり、何でもわかった気になって頭でっかちになりやすい。
特に、ネガティブな情報に興味がある子には、アルゴリズムでさらにネガティブな情報が入ってくるので、ディープな世界にハマりやすい危険性もあります。だから僕は、子ども時代にできるだけアナログな体験をさせることが大事だと思っています。
炎上目的で名前入りの兄の動画をネットに
―― デジタル一辺倒だと善悪の判断がわからなくなる、と。
佐々木 以前、ある小学生の男の子が、お兄ちゃんの動画を勝手にYouTubeにアップしたことがありました。フォーナイトというゲームを兄弟で一緒にやっていたら、お兄ちゃんが敵をやっつけて、もう死んでいる敵の死体に向けて銃を撃ち続けたんです。それを見た弟が、「ゲームのマナー違反だ!」となって、炎上させるつもりで「拡散希望!」と書いたお兄ちゃんの動画をネットにあげてしまったんです。しかも名前入りで。
それに気づいた親御さんが僕のところに相談にきて、すぐ削除したので大事にはいたりませんでした。でももし気づかなければ、そのお兄ちゃんの動画は、いろんなところで拡散されて永遠に残るところでした。そういう失敗をした経験は、2人とも一生忘れないと思います。