「ミ・アモーレ」ラテン・タッチの小気味よいギター
中森明菜の「ミ・アモーレ〔Meu amor e・・・〕」を耳にしたことがあるだろう。明菜が人気絶頂期の1985年に発表した曲で、オリコンのチャートで初登場第1位を記録し、売り上げ枚数が60万枚を超える大ヒットとなった。その勢いは年末まで続き、見事に同年の日本レコード大賞を受賞。中森明菜の代表曲と言っていい。
「ミ・アモーレ」は、ラテン・フュージョン界の第一人者であった松岡直也が作曲と編曲を手掛けた曲で、歌詞の中にリオのカーニバルも登場し、エスニックな雰囲気が満載。これが大ヒットの要因にもなっていたと思う。この曲のポイントのひとつとなっているのが、ラテン・タッチの小気味の良いギターで、曲に官能的な響きを与えるうえで重要な要素となっている。これを弾いていたのが和田アキラというギタリストだ。
日本フュージョン界の「伝説」64歳の逝去
当時の和田は、松岡直也のグループのメンバーでもあり、その縁で起用された。他にも、ジャズ・シンガーの阿川泰子や、イエロー・マジック・オーケストラの高橋幸宏のソロ作、女性シンガー・ソングライターの門あさ美のアルバム、他にも井上陽水や森高千里などの人気アーティストのレコーディングなどに参加しているので、知らず知らずのうちに和田アキラのギターを耳にしていることかと思う。
その和田アキラが、2021年3月28日に惜しまれつつもこの世を去った。数年前から体調を崩し療養中ではあったのだが、64歳というのはあまりにも若すぎる。まだまだギターを弾きまくれる年齢でもあり、残念という言葉しか出てこない。
和田の名前は一般的に知れ渡っているとは言い難いかもしれないが、日本のフュージョン/クロスオーバー界では伝説とも言えるギタリスト。中でも昭和30年代生まれのギター少年にとって、和田アキラは永遠のヒーローとも呼べる存在なのだ。