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解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要

 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。

公明党の山口那津男代表 ©文藝春秋

 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。

 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。

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二階俊博幹事長 ©文藝春秋

 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。

 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。

麻生太郎副総理 ©文藝春秋

菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示

 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。

 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。

安倍晋三前首相と菅義偉首相 ©文藝春秋

 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。

(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)