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三段目力士の死亡事故で感じた大相撲の問題点 コンタクトスポーツの専門家が感じた“3つの違和感”

三段目力士の死亡事故で感じた大相撲の問題点 コンタクトスポーツの専門家が感じた“3つの違和感”

2021/05/09
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ポイント2 対応に時間がかかっている

 また、2つ目としてその後の対応にかかった時間に関しても疑問が残りました。

 映像を確認すると、取組後に負傷した力士はうつぶせのまま動けず、倒れてから約1分後に呼び出しなどの関係者が3人であおむけにしています。その約3分後、国技館内の相撲診療所からようやく医師が到着し、力士の状態を確かめ、担架に乗せて土俵を降りています。その後、救急搬送されたと報じられていますが、一連の対応に約6分以上の時間を要しています。

うつぶせで倒れる響龍と、そのまま勝ち名乗りを上げる相手力士

 アメリカンフットボールでは選手が立ち上がれないような事故が起こった時には、フィールド外にいる医療関係者が、それこそ肉離れせんばかりの勢いでフィールドに猛ダッシュしてきます。それは1分1秒が選手のその後を左右することを分かっているからです。今回の事故のように、倒れた選手をそのままにして、勝ち名乗りを続行するというのはあまりにも異様な光景だったように思います。また、医療関係者ではないスタッフたちが倒れた力士を無造作に動かしているというのも信じられない衝撃を受けました。

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ポイント3 頭部や頸部に関するケガへの意識

 最後に最も気になったのが、頭部や頸部に関するケガに対する関係者と力士たち自身の意識の部分です。

 今年1月の初場所では、ある取組で頭からぶつかった力士の片方が立てなくなったにもかかわらず、回復直後に取り直しの一番が行われたことがありました。それもあってようやく「勝負がつく前でも審判団が危険だと判断した場合は、その力士を不戦敗として相撲を取らせない」という決まりができました。大相撲の競技特性を考えるとおそらくこれまでも似たような事態は起きていたはずです。そういった状況について関係者も力士たち自身も、本当に深刻に考えていたでしょうか。

カレッジでもアメフトはサイドラインに医療関係者などスタッフが多数控えている

 歴史や慣例というのは確かに大切なものだと思います。ですが、それと比べるまでもなく、人の命や若い力士の将来はもっと重要です。もし、関係者や力士たちがこれまでのケースから真剣に対応を考えていたのなら、今回のような事故が起きた際に、医学的知識も何もない審判団の判断に事を委ねるということは起きなかったように思います。

 2015年にウィル・スミスが主演した映画『コンカッション』が話題になりました。NFLの選手たちが引退後も脳震盪などの後遺症に悩まされていることに気づいた医師の物語です。そういった作品にも代表されるように、NFLではここ10数年ほどで明らかに脳震盪をはじめとする選手の負傷に対する注意意識が上がっている。これは周囲のスタッフや経営陣はもちろんのこと、選手たち自身も強く考えていることでもあります。