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NFLではトレーニングの場を労組がチェック、脳震盪3回で引退

 例えば、NFLではオフの練習に関する制限がものすごく厳密に決まっています。

 チームとしてはレギュラーシーズンで結果を出すために、もちろん各選手に練習をさせたい。でも、そこは選手会や労働組合にあたるNFLPAがちゃんと主張する。「NFLは世界で一番儲かっているのに、選手の平均寿命は短い。そういうスポーツだからこそ、セカンド・キャリアや家族との時間、プライベートを含めた『ワークライフバランス』を重視するべきだ」と言うわけです。

スタンフォード大での練習風景。ヘルメットにさらにショックパッドをつけている

 具体的に言えば、9月〜翌年2月の通常シーズン中以外のオフシーズンに行うチームの全体練習は、決められた期間内に10回だけしか許されません。その10回しかない練習も、ヘルメットだけを着けた状態で行う軽い練習が中心で、激しいコンタクトや競争を煽るようなシビアな練習は許されていません。また、2年目以上のベテラン選手がチームの施設に滞在していいのは4時間までとも決められています。2018年にはオフシーズン中にボルティモアのチームが「規定を超えたコンタクト練習をした」という理由で、10回しかない練習を8回に減らされています。オーナーには1000万円以上の罰金も科せられました。

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 さらに一定以上の脳震盪を3回起こした選手は有無を言わさず引退になります。実際にスタンフォードのOB選手でも、NFLのチームに入団した有望なルーキーだったにも関わらず、1年目に2度の脳震盪を起こしたため自身の判断で引退した選手もいました。その選手は「夢の舞台で危険を冒しながらプレーすることよりも、命や将来の方が大事だ」と言っていました。

「伝統」を隠れ蓑にせず、改善すべき安全性

 アメリカンフットボールも大相撲も、スポーツ選手としてのキャリアはもちろん大事です。それまでその選手が積み上げてきたものは並大抵のものではないでしょう。それは十二分に理解できます。ですが、実際には引退後の人生の方がはるかに長いわけです。それを軽んじてまでスポーツにすべてを懸けるのは、明らかに間違っている。

 最近ではスタンフォード大のアメフト部は、ヘルメットの上にさらにショックパッドをつけて練習をしています。例えば相撲界でも、稽古の時にヘッドギアをつけたりすることはできると思います。

ヘルメットにさらにショックパッドをつけている

 もちろん大相撲とアメリカンフットボールは全く違う競技ですし、大相撲には「伝統」という側面もあるかと思います。ですが、そういった言葉を隠れ蓑にして、力士たちの命を危険にさらすというのはもはや時代にそぐわないのではないでしょうか。そういった部分は、競技に関わらず改善されていかなければならないと思っています。

 シンプルに考えて欲しいのは、伝統を守る事と人の命や若者の将来、どちらが大事なのかということです。今回の事故のように若い命や将来が犠牲になることは、決してあってはならないと思います。