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──「食」をテーマに選んだのは、食べることが好きだからですよね。ご自宅での食事でもこだわりなどはあるのですか。

伊藤 食べることは普通に好きですが、4年くらいまったく料理していないんです。今年で「料理しない」歴5年目に入りました。

 というのも、ある時、韓国旅行から帰ったらヨシダサン(夫の吉田戦車さん)がいきなり台所に立つようになって、そこからずっと朝昼晩毎日食事を作ってくれているからなんです。なので、それがずっと続くように、手伝いもせず、ただおいしいものを作ってもらって大人しく食べている状態です。

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 何かきっかけがあったのかもしれませんが、「今日から俺が作るから」と宣言されたわけでもなく、ある日突然作り出し、それがなんとなく続いている感じで……。

 もともと料理は好きで、台所を自分で把握するのも楽しいみたいなので、「どうぞ、どうぞ」という感じでお任せしています。

 

──まるで大森さんですね! 「今日これ食べたい」とリクエストされたりもするのですか。

伊藤 それはないです。出されたものをおいしく食べるだけなので、どちらかというと配給みたいです。アツアツのできたてを食べてほしい時などは「集まれええーー」と、軍隊みたいな号令がかかる時もあります(笑)。

 第1話「旧姓わたなべ」で、大森さんが作った鶏の丸焼きみたいな料理も食べたいんですが、ヨシダサンはああいう肉の丸焼きみたいなのは絶対に作らないんですよね。たまに唐揚げは作りますが量が足りなくて。おいしくて感謝しているけど、(量が)足りないから憎い(笑)。

──どんなお料理が多いんですか。

伊藤 ヨシダサンの料理は、ゴボウとか人参などの地味な根菜料理が多いです。それはいいんですけど、ゴボウ料理を出す時に、数回に1回は旧日本兵の話をするんですよ。戦争中に外国人捕虜にゴボウを与えた旧日本兵が、「木の根を食べさせた」と誤解され、虐待のひとつとしてBC級戦犯となり絞首刑にされたという。前に何度か聞いているのに、初めて話すみたいに「ゴボウってね……」と話すので、食べる方としてはありがたいけど、憎い(笑)。

 そういう、得たものがあれば失うものもあるというか。料理を作ってもらってありがたいと思う反面、憎いと思うことも増えた気がします(笑)。

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