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「大森さんが‟デブの嫌なヤツ”から‟人情に篤い優しい人”になったのが気になっていた」 漫画家・伊藤理佐の新作、‟ブラック度”が濃くなったワケ

伊藤理佐インタビュー#2

2021/05/16

 クスッとしたり少し切なくなったり。何気ない日常の「あるある」を描いたオムニバス・ショート『おいおいピータン!!』(講談社)。他愛のない毎日のなかに埋もれている「宝物」を、どうやって見つけているのだろうか。作者の伊藤理佐さんに、ネタの集め方や家庭での意外な一面について聞いた。(全2回の2回目。前編を読む

 

(取材・構成:相澤洋美、撮影:文藝春秋/鈴木七絵)

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──『おいおいピータン!!』では、時々描かれているブラックなエピソードがスパイスのように効いています。前作よりもブラック度は濃くなったように感じますが、意識されているのですか。

伊藤 実はそうなんです。『おいおいピータン!!』は、大森さんと結婚して幸せなはずの渡辺さんが「ブラックわたなべ(旧姓)」として登場する話(第1話「旧姓わたなべ」)から始まります。この話は、「ブラックな部分を忘れないようにしよう」という私自身の戒めから生まれました。

 人間ってブラックな部分が誰にもあるはずなんです。だからこそ人間味があると思うんですけど。もともと「デブの嫌なヤツ」という設定だった大森さんが、描き進めるうちにだんだん「人情に篤く面倒見のいい優しい人」になってきたのが気になっていたので、「そんなにいい人じゃなかったはず」と初心に戻り、ブラックな部分を出すように意識しました。

 それに、人を傷つけるブラックはよくないですが、どうでもいい黒い話の方が、ネタとしてもよく転がっていますよね。なので、『おいおいピータン!!』は前作よりも全体にブラック度が高いかもしれないです。

 

──大森さんの元カノ・陽子さんの「進化」もとても気になります。これはキャラクターが一人歩きした結果なのでしょうか。それとも、伊藤さんの「ブラックスパイス」が加味されているからでしょうか。

伊藤 陽子さん、私にいいようにされていますよね(笑)。読者の方からもよく言われます。

 でも私の場合、「キャラクターが勝手に動き出す」ということは一切ないんです。まずネタがあって、そこからエピソードを組み立てる中で「それなら、このキャラクターを使おう」という感じでストーリーができていくので。うまくあてはまるキャラクターがいない場合は、新しいキャラクターが生まれたりもしますが、そういう意味では陽子さんは使いやすいキャラクターなのかも。