──第1巻の第2話「意識して」で、大森さんが「チャーシューのはじっこが好き」と言っているのは、伊藤さんご自身の経験談でもあるんですね。
伊藤 何しろ半径2.5メートル圏内のことしか把握できない人間ですから(笑)。第2巻第23話「家電の呪い」も、私の実際のホラー体験がもとになっています。
締切を過ぎても原稿を書けなかった私に、担当さんから原稿催促の電話がくるんですが、いよいよ切羽詰まった休日の深夜、掛かってきた原稿の催促電話の向こうから洗濯機の終了音が聞こえてきたんです。それが我が家の洗濯機と同じ音で……。数年経って「あのネタ使えそう」と思って、ストーリーに入れました。
──ちなみに、その時の担当さんとは男女の関係は……。
伊藤 まったくありません。そこは妄想です(笑)。
休日の深夜なので、電話の声でご家族に迷惑をかけたくないという理由で脱衣所からお電話くださったと後から聞きました。先日その方が、「伊藤さん、最近は締切守っているようですね」と別の担当さんに話していたそうです。ね、ホラーでしょ?(笑)
第15話の「大家さん」もご近所のおばあさんをモデルに、「おはぎ」にまつわる実話をもとに描きました。あの時は家族みんなで「おはぎ脳」になってしまい、あれもある意味「ホラー」でした(笑)。
──伊藤さんは過去にダイエットの本も出されていますが、「食べたい」と「太りたくない」は永遠のジレンマです。歳を重ねると痩せにくくなりますが、いまは、ダイエットなどはされているのですか。
伊藤 いまは特にダイエットはしていないです。見たとおり小デブですが、昔はもっと大デブだったので、いまくらいでいいかと思って。
以前、ダイエットの本を2冊(『なまけものダイエット・楽して痩せたい甘口篇』『なまけものダイエット・とにかく痩せたい辛口篇』)出したんですけど痩せなかったんですよ。その時に、担当さんから紹介してもらった「月曜断食」でようやく痩せたんですが、週に1回断食する「月曜断食」は、お金も時間もかからないので、興味のある方はやってみたらいいと思います。私は体調もよくなって、気分的にもすっきりしました。
──妙齢の女性は、ホストにハマるよりも、第1巻の第12話に登場する「フトシ君」と「ユタカ君」に好かれる方が怖いですからね(笑)。
伊藤 自分で「妙齢おねいさん道」(『オール讀物』連載)という連載を描いていて言うのもなんですが、「妙齢」って実は20代の若い女性を指す言葉だそうです。だからこのタイトルで連載続けるのって、ある意味詐欺というか。
百歩譲って連載開始時は「妙齢」だったとしても、いまは明らかに「妙齢」ではないので、タイトルをそろそろ変えないといけないんですよね……。「初老おねいさん」とか? それはあんまりなので、「おいおいおねいさん」とか。この「おいおい」は、もちろん「老い老い」ですけど(笑)。