──「ネタ」はどうやって考えているのですか。
伊藤 探してみるとネタって結構転がっているので、拾ってくることが多いですね。同級生の話やテレビで見たこと、自分に起こった話などを「拾って」きて「こうしたら使えるかな」みたいな形でストーリーにしています。
旅先でドラマチックな展開があって、その時の経験を基に……みたいな話ができればいいんですけど、逆に旅先なんかでは落ちていないんですよ。家の近所の道ばたの方が、ネタは転がっているような気がします。
もともと出不精で、自分の半径2.5メートル圏内のことくらいまでしか把握できないんです、私。油断すると、与党と野党もごっちゃになるし、ましてアメリカ大統領選なんて、党の名前も選挙のしくみもよくわからない。
この間、ぼんやり月を見ていて、初めて球体に見えたんです。もちろん、月が球体という事実は知っているんですが、普段月なんて意識して見ないじゃないですか。その時は「月って球体なんだ」と、新しい発見をしたようで、ちょっと感動しました。
──『おいおいピータン!!』で描かれている何気ない日常の原点は、伊藤さんの「半径2.5メートル圏内」ということなんですね。ご主人の吉田戦車さんも同業なので、ネタの奪い合いになりませんか。
伊藤 なりますよ、特に子どもネタは。ただ、うちは「先にネタ帳に書いた方が勝ち」というルールがあるんです。だから、「これ、おもしろい!」と思ったら、ダッシュして自分のネタ帳に書く。最近はズルして、台所のカレンダーにパパッとメモして携帯で写真に撮り、「先に書いたもんね」と見せて「権利」を入手したりしています。
──ご夫婦とも漫画家ですが、お互いの才能に嫉妬したり、仕事の妨げになったりという「ブラック」な面もあるのでは。
伊藤 私が圧倒的に「漫画家・吉田戦車」のファンなので、嫉妬するということはありませんが、ずっと一緒にいると(ケンカをしても)「まあでもお互い(結婚が)2回目なのでうまくやりましょう」とか「その日のうちに謝りましょう」などと言ってくるので、そこで和解しています。邪悪でしょ?(笑)
──大森さんのように、伊藤さんの好きな料理を作ってくれて仲直り、ということもありますか。
伊藤 ないですね。でも、私が好きなはじっこは必ずくれます。
私、料理のはじっこが好きなんですよ。チャーシュー、パン、イカ、まぐろ、太巻き……。全部はじっこが好きなので、はじっこは私に回ってきます。ヨシダサンはもちろん、娘もはじっこを私にくれるので、それは毎回うれしく思っています。