『闇金ウシジマくん』(小学館)の作者・真鍋昌平さんの最新作『九条の大罪』(小学館)。主人公は九条間人(くじょうたいざ)。ひき逃げ犯の半グレや、反社会的勢力とつながる悪徳介護施設関係者など、裏社会が絡む案件を扱う弁護士だ。重いテーマを扱うストレスとの戦い方や、閉塞感の強い現代を楽しく生きるヒントをお聞きした。(全2回の2回目。1回目を読む)

(取材・構成:相澤洋美、撮影:今井知佑/文藝春秋)

真鍋昌平さんの仕事場で

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毎日楽しいと思いながら漫画を描いています

──『ウシジマくん』は描くのにかなりのエネルギーが必要だったと伺いました。今回の『九条の大罪』は、いかがですか。

真鍋 裏社会の闇を描いた『ウシジマくん』は、犯罪者目線の物語なので、嫌悪感を持たれることも多く、自分自身でも描いていてグッタリ疲れることがありました。今回は同じ世界を描きながらも、「弁護士」という法の立場から描いた物語です。『ウシジマくん』より読みやすくできるだろうと思って描き始めたのですが、より人の深い部分をえぐり出すことになってしまいました。

 今はコロナのせいで、気分転換によく行っていた飲み屋にも行けないので、発酵食品を食べたり、犬と走ったりしてストレスを発散しています。

──健康的ですね。

真鍋 積極的に健康的な生活を送っているわけではないんですよ。あまりにも不健康でストレスがたまるので、仕方なく発酵食品を食べたり、野菜をたくさん入れたみそ汁を飲んだり、犬の散歩で走ったりしているだけです。

 これは作品を描く上でもそうですが、生きる上で基本的に「どうやったら楽しくできるか」を大事にしているので、やりたいことをまずやってから、あとは帳尻合わせをしている感じです。

『九条の大罪』から制作スタイルも変えました。これがさらにいい効果で。毎日楽しいと思いながら漫画を描いています。

 

フルデジタル化はちょうどいいタイミングだった

──どのようにスタイルを変えたのですか。

真鍋 作画をフルデジタルに変え、それに伴ってアシスタントも全員リモートに切り替えました。数年前から考えてはいたのですが、絵の雰囲気が変わってしまうので、新連載からやろうということであたためていました。

 折しもコロナでアシスタントが集まって作業するというのが難しくなってしまったので、ちょうどいいタイミングだったかなと思っています。これまでもアシスタントとは部屋をわけて作業していましたし、隣の部屋から各自の自宅へと変わっただけで、特に不自由は感じていません。

 そうはいっても、取材対象者も含め、『ウシジマくん』の時より関わる人の数は増えているので、そのあたりのバランスを取るのは難しくなりました。ただ、ゼロから積み上げてきた『ウシジマくん』とは違って培ってきたベースがある分楽なのは確かです。目の前のことを一つずつ楽しんでいると、自然と力のある人が集まって協力してくれるので、すごくいい流れができていると思います。