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2021/05/25

source : 週刊文春出版部

genre : ニュース, 社会, 政治, 読書

“官邸の守護神”黒川弘務氏の存在

 池田氏の言うとおりなら、それは大阪地検特捜部に提出されたはずだ。そんな“決定的証拠”があったにも関わらず、そして心ならずも改ざんの“実行犯”にさせられた赤木俊夫さん本人が「自分は犯罪者だ。もう逃げられない」と認識していたにも関わらず、大阪地検特捜部は公文書変造罪にも公用文書毀棄罪にもあたらないとして、佐川氏をはじめ財務省の関係者ら38人全員を不起訴にした。検察審査会は「不起訴は不当だ」と議決したが、それでも大阪地検特捜部は再び不起訴にした。これは一体なぜなのか?

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 特捜部がこの事件の捜査を行っていた当時、私はNHK大阪報道部で司法担当として検察庁を取材していた。当時の特捜部長は山本真千子氏。2018年5月にすべてを不起訴にした山本氏は、まもなく函館地検検事正に栄転。翌年、大阪地検ナンバー2の次席検事として戻ってきた。このポストは、いずれ天皇陛下の認証官たる「検事長」就任の可能性が高いと言われる出世コースだ。「不起訴のご褒美か」としばしば揶揄される。

 だが一方で私は、現場の検事たちがギリギリまで捜査を続けていたことを知っている。当時の私のメモ帳には、18年5月上旬になってもまだ関係者の事情聴取を行っていたことが記されている。不起訴ありきではなく、何とかこれを事件にできないか模索する動きが現場には確かにあった。山本特捜部長も、それを圧力をかけてつぶすようなことはしていなかったように見えた。

 これに対し終始一貫、事件をつぶして不起訴にする方向で圧力を加えていたのは、東京の法務省・最高検サイドだ。そして当時の法務省事務方トップの事務次官は黒川弘務氏。“官邸の守護神”の異名を受け、その後、東京高検検事長の時に政権の意向と言われる無理筋の定年延長で、検察トップの検事総長を目指すかと思われたが、記者との賭けマージャンを週刊文春にスクープされて辞任に追い込まれた。