大型連休が明けて、全国の自治体への新型コロナウイルスワクチンの供給は一気に進んできたように見える。高齢者へのワクチン接種が開始された当初、政府は「試運転で」と慎重さを求めてきた。だが、供給の目途が立つや否や「7月末までに終了するように」(菅義偉首相)と号令がかかる。前例のない予約受付の煩雑さに加えて、接種計画の変更を迫られた自治体の嘆きも聞こえてくる。

 省庁の縦割りの調整役を担うべく登場した河野太郎行政改革相だが、彼の言動が劇薬となって軋轢が生じ、想定外の事態を招く結果となっている。ワクチンメーカーとの電撃的な追加契約など、先を見通したハンドリングには目を見張るものがある。だが、よく言えば突破力、悪く言えば独断専行の振る舞いは、政治家としてのスタンドプレーに映る。それに振り回される自治体や省庁の担当者はたまったものではない。

河野太郎ワクチン担当大臣 ©文藝春秋

有効性と接種間隔が異なる“3つのワクチン”

 現在、日本で承認されているワクチンはファイザー製のみだが、5月20日にもアストラゼネカ製とモデルナ製への承認の可否が判断される見通しだ。ファイザー、モデルナ製は、ともにmRNAワクチンと呼ばれるものだ。温度管理が難しい反面、臨床試験段階では95%前後の有効性を示し、変異株に対しても、ある程度の効果が見込まれる。

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 これに対して、ウイルスベクターワクチンのアストラゼネカ製の有効性は、第Ⅲ相臨床試験でも70%台後半に留まっている。ワクチンの比較は条件が異なるので一概には言い切れないが、この微妙な有効性の差は接種する住民にとっては気になるところだ。加えて、血栓症が生じる副反応がクローズアップされている。同社製のワクチン接種を中断した国もあり、印象としては見劣りする。

©iStock.com

 一方、アストラゼネカ製の利点は、何と言っても温度管理が楽なことと、承認されれば国内生産で安定的な供給が期待できることだ。

 ワクチンの種類の違いは、接種間隔にも表れている。ファイザー製が3週間の間隔をあけて2回目を接種するのに対して、アストラゼネカとモデルナは4週間の間隔を置くことが決まっている。

 行政にとっては、これら温度管理や接種間隔の違いによる混乱を防ぐための態勢づくりが大きなポイントだった。