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2021/05/18

「完全な勇み足でございます」発言

 ワクチンの打ち間違いなどを防ぐために、厚生労働省が昨年12月に設けたのが、「1施設に1種のワクチン」の原則だ。複数のワクチンが供給されれば、施設ごとに扱うワクチンを変える計画だ。そうすれば、住民は会場を選ぶことによって、接種するワクチンを選択できることになる。以降、厚労省はこの原則のもとに接種計画を練ってきた。

 3月末、河野大臣の側近である小林史明内閣府大臣補佐官が、テレビ番組内でこの方針に則って、「ワクチンを選ぶことができる」と言及すると、2日後、河野大臣は完全否定した。小林補佐官の「完全な勇み足でございます」と言い放ったのだ。

 河野大臣にそれなりの理由があれば、従来の方針を覆すことは当然あり得る話だ。であれば、自分を支えてくれている小林補佐官や、接種態勢の準備を進めてきた厚労省と意思疎通を図っておくべき。それが理解されていないとすれば、彼のスタンドプレーと受け取られても仕方ない。むしろ責められるべきは、チーム内をまとめられていない河野大臣ではなかったか。

ハシゴを外された小林史明内閣府大臣補佐官 ©共同通信社

前言撤回の負担は各自治体へ

 4月下旬には東京と大阪に、1日1万人規模の接種ができる大規模接種会場を作る政府の方針が決まった。1日で「100万回の接種」(菅首相)も掲げられた。首相の意向が強く反映されたとも聞くが、大規模接種会場では、高齢者を対象にモデルナ製のワクチンを使うという。「高齢者はファイザー製を使う」という河野大臣の前言は撤回されたことになるが、問題はそれ以外にある。

 もともと厚労省は、温度管理の難しいファイザー製のワクチンについては、集団接種を想定していた。それを、日本医師会の中川俊男会長の要望を聞き入れて、診療所における個別接種も可能と認めたのは、ほかならぬ河野大臣のはずだ。このため、大規模接種会場での接種の担い手である医師が不足する事態に見舞われている。

 菅首相が4月23日の会見で打ち上げた「7月末までの接種完了」は、努力目標であることを差し引いても、そのために築き上げてきた計画変更を余儀なくされるのは自治体だ。度重なる変更に対応できる自治体が、どれだけあるのだろう。もし河野大臣が、首相を「勇み足」と切って捨てたのであれば、あっぱれなのだが。

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出典:「文藝春秋」6月号

 一向に進まないワクチン接種と現場の混乱――「文藝春秋」6月号および「文藝春秋digital」掲載のレポート「『ワクチン大混乱』河野太郎は何をしている」(辰濃哲郎)は、その顛末をレポートしています。

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