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小室哲哉プロデュースの時代

 私は正直、カメラの前でイチャイチャし甘ったるい声でトークをする彼女があまり好きではなかった。が、それでも「まあ、なんだかんだ歌はいいんだよなあ」と、レンタルCDでいそいそとアルバムを借り、好きな曲を集めてカセットを作ったりもした。なんだかんだ小室哲哉による楽曲は素晴らしくエモーショナルだし、やっぱり歌がうまいんだもの……。

 そっぽを向こうとしても、正しい音程と素晴らしい滑舌、どっしり「情」まで含んだ歌声にグルンと巻き込まれてしまう感じである。

 4thの「LOVE BRACE」なんて神々しい讃美歌のよう。5th「save your dream」も、あまりにも彼女が気持ち良さそうに歌うので、つい「自分も同じように歌えるのではないか」と勘違いしてしまった。カラオケで入れたはいいが、最初の歌い出し「大空を~高くぅー↑」で早くも血管が切れそうになり、「すいません、やめまーす……」と演奏中止ボタンを静かに押したのも、懐かしい思い出である。

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 小室プロデュース後期の名曲に「here we are」がある。この歌はTBS系の金曜ドラマ「ランデヴー」の主題歌として初めて聴いた。言葉を置くように歌っていて、ひたすらやさしくせつなくてCDを買いに走った。が、通しで聴いたら、2番から、どんどん孤独感や苦しみのイメージがクレッシェンド。歌手として凄みを感じた。

第37回レコード大賞では新人賞を受賞した(1995年撮影)

どんなに目が虚ろでも、口からCD音源の感動

 個人的に一番好きなのが、小室哲哉と破局して休養を挟み、その半年後に出した14th「as A person」(1999年)である。

 これを初披露した「ミュージックステーション」は今でも覚えている。テレビに出ていいのだろうかと心配になるような虚ろな目。トークもトロンとして、とても本調子とは思えない。

 いざステージに立ってイントロが鳴っても、リズムを取るその姿は、カチコチと力が入ったまま。

 ところが、口を開いた途端、出た歌声は透き通るように美しくて、トークのときとは比べ物にならないくらい滑舌もいいし音程も正確。目はうつろなままだったが、歌声は凄まじいクオリティで「朋ちゃんの喉どうなってんの!?」と画面にくぎ付けになった。

 しかもこの「as A person」は、華原自身による作詞。ストレートに失恋への絶望を思わせるワードの中に「多分どんな人だって 人として 人なりに 人だから」という、ちょっと異質な歌詞が急に挟まるところが、すごく印象的だった。そしてCDを買いに走った。これまた8センチの長い仕様のやつだった。多分、朋ちゃんのCDでは、これが最後の8センチCDではなかっただろうか。