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楽屋ではガッサガサの声…それでも華原朋美がステージに立ち続けられる“不思議な才能”

楽屋ではガッサガサの声…それでも華原朋美がステージに立ち続けられる“不思議な才能”

2021/05/24
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20周年記念ライブでのアレンジに驚いた

 そういえば、海援隊の楽曲にも「人として」というタイトルがあったっけ。そう思い出し、こちらも聴いてみたら「人として人に傷つき」「それでも人しか愛せない」というサビに「as A person」と重なる気がした。朋ちゃんと武田鉄矢とがシンクロ……。音楽とは本当に不思議である。こちらもとても良い曲なので聴いたことのない方はぜひ。ちなみに「3年B組金八先生」第2シリーズの主題歌で、卒業ソングとして大人気だ。

 この「as A person」と次の「be honest」「Believe In Future ~真夜中のシンデレラ~」という作詞:華原朋美・作曲:菊池一仁コンビの3曲は、特別な透明感を放っている。彼女特有のネットリした湿気がなく、ヒリヒリと乾いた歌声。そしてまっすぐで、どこか幼女のよう。きっと、華原自身精神的に一番大変なときの楽曲だと想像できるが、だからこそ、心の皮を剥いた状態で差し出された感覚になる名曲である。

 ちなみに2015年の「TOMOMI KAHARA 20th Anniversary Live」で、彼女は「as A person」をアップテンポにアレンジを変えて歌っている。同じ歌詞なのに、こちらは生きる強さと攻撃力が感じられる仕上がりになっていて驚く。

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2015年に刊行した著書『華原朋美を生きる。』(集英社)には、小室哲哉との対談も収録された 

電波少年の企画から全米デビュー

 華原朋美はトークで、よく自身の人生を「ジェットコースターのよう」と例えている。確かに落ち込み方はすごい。が、同時に多くのチャンスをもらい、ガッと再起する人という印象も強い。

 小室哲哉との破局後、立ち直るきっかけを模索していた2000年には、バラエティ番組『進ぬ!電波少年 ~華原朋美の電波少年的全米デビューへの道~』という企画で、前準備もなく7ヶ月間渡米。自力だけで全米でCDデビューすることを目指し、アルバイトなどをしつつボイスレッスンやオーディションに挑む過酷な挑戦をしている。

 今振り返るとあの番組は相当ムチャクチャであった。が、彼女はそのムチャクチャなサバイバルを泳ぎ切り、本当に全米デビューしてしまったのだ。2001年の全米デビュー曲「Never Say Never」は、メロディーは正直歌いにくそうな感じがしたが、元プリンセス・プリンセスの中山加奈子が担当した日本語詞が彼女の「再生」とマッチして素晴らしい。

 その後2007年からも、持病や薬物依存で長期休養に入っているが、もう一度2012年に見事復帰。2014年から2015年にかけて発表されたカバーアルバムは、シンプルに彼女の声と小室哲哉楽曲の相性の良さが再確認できるし、工藤静香の「千流の雫」やSPEEDの「my graduation」などのハマり具合もとても興味深い。男性ボーカル楽曲の中では、LUNA SEA「ROSIER」のカバーがゴリゴリにカッコよくて、思わずニンマリする。