たった10㎝の差が大きい
“近くをたくさん見たから近視になる”という理屈なら、ゲームの画面から離れてプレイすれば視力の低下は避けられるということなのか。
「その通りです。昔、『テレビを見ると目が悪くなるよ』といわれていたのは、当時のテレビは近づかないと見えないサイズだったから。テレビが大きくなったのだから、普通に見ていれば十分な距離は取れていると思います。長時間見ても、距離を取れていれば視力への影響はそれほどないでしょう」
ただ、現実問題として子供の近視は増えている。2019年8月、慶応大学医学部のグループが発表した研究結果によると、都内に住む小学生689人のうち約77%が、中学生では727人のうち約95%が近視だった。平松医師が続ける。
「子供たちが、手元を見る機会が増えたことが原因だと思われます。昔は外に出て遊んだり、本を読んでいたりしたのがテレビになり、テレビがパソコンやスマホに変わってきて、近視が進んだのでしょう。読書か、スマホかでは微妙な違いがある。一般論でいえば、本は30㎝くらいの距離で読んでいます。でも、スマホや携帯ゲームだと20㎝くらいになる。たった10㎝と思うかもしれませんが、この差が大きい」
テレビが大きくなった一方で、スマホアプリのゲームも増えた。ただし、スマホには動画再生など、ゲーム以外にさまざまな用途がある。そうした状況を踏まえれば、「ゲームで目が悪くなる」という言い方は少し乱暴なのかもしれない。
目の負担を減らすために休憩を
また、ゲームをプレイする人の悩みとして切っても切り離せないのが「目の疲れ」だ。
「目が疲れる原因は、ゲームに集中することで瞬きの回数が減るから。瞬きをすることで涙を分泌して乾燥を防いだり、目を休めたりしています。何もしていない時は1分間に30回瞬きをしていますが、読書などでは12~15回、モニターを見ていると7~8回程度まで回数が低下するといわれています」
どうすれば、少しでも目の負担を減らすことができるのか。
「瞬きの回数が減ってしまうことはゲームをプレイしている以上避けられないので、定期的に休憩を入れることが大事です。目安としては、60~90分に1回程度が良いでしょう。
目が乾くことも疲れ目の原因なので、加湿器などで湿度を高く保つことも重要です。ホコリや花粉が目に入るとそれがダメージになるので、空気清浄機を置くのも効果的。目薬をこまめに差すのもいいですが、成分が劣化するため開封後1カ月以上経ったものは使用しないよう注意してください」
前述のように、テレビやモニターから距離を取ることも重要だ。
「きちんと距離を取るためには、30㎝の長さに切ったひもなど分かりやすいもので指標を作るのが良いでしょう」
なんと、ときどの「マーダーメジャー(*1)」は理に適っていたのだ。
*1 格闘プロゲーマーのときど氏が、大会の対戦前に自身とモニターとの距離を測るルーティン