『時間を区切る』ことは大切
「少なくとも私が知る限り、『60分』という数字を分岐点とすることに医学的な根拠はありません。目安には違いないでしょう。『ゲームにハマりすぎて生活が壊れてしまう人がいる』というのはまぎれもない事実ですが、最新の医学で『ゲーム依存が起きる原因』について、全てが解明されているわけではありません。分かっていることとしては、『ゲーム依存の陥りやすさは人それぞれ』ということと、『発達障害など特定の疾患を抱える人はゲーム依存になりやすい可能性がある』ということくらいです。
『60分』に根拠がない一方で、私は『時間を区切る』ということ自体には賛成です。脳の構造上、人間は時間で区切られないと、楽しいことから離れられなくなり、没頭してしまいます。そうなると睡眠が削られます。睡眠を取らないと、記憶力が低下したり、認知症やうつ病などのリスクが増え、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなったりする。子供についていえば、成長ホルモンが出にくくなってしまい、低身長になるなど成長を妨げてしまいます。きちんと時間を区切ってゲームを遊んでいるのなら、杓子定規に『60分まで』と決める必要はないと思っています」
「ゲームで目が悪くなる」は本当か?
ゲームに夢中になってテレビ画面に釘付けになっていると、
「そんなにゲームばかりやっていたら目が悪くなるから、やめなさい!」
と親から注意された経験はないだろうか。私はある。
子供の頃は、そんな親の言葉になんとなく説得力を感じていたが、大人になった今、あらためて疑問として沸き上がってくる。
「ゲームをやると本当に目が悪くなるのだろうか?」
目が悪くなる、にはそもそも近視や乱視などさまざまな原因があるが、ここでは「近視」に絞って話を進めたい。
視力回復方法や老眼などについての著書がある、眼科専門医の平松類医師(二本松眼科病院)によると、近視とは「目のなかにある、カメラでいうところのレンズ(水晶体)とフィルム(網膜)の距離が離れてしまうことにより、近いところにピントが合いやすくなっている状態」だという。
「諸説ありますが、ひらたくいうと『近いところを見る癖が付いた』ということです。生まれてから成長していく過程で、近くばかり見ていると、生活スタイルに合わせて目が順応していく。『狩猟民族の人は視力が高い』という話を聞いたことがあるかもしれませんが、これは遠くを見る機会が多いため、それに合わせた目になっているということです」