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新しい地図のファンは“NAKAMA”

 渋谷さんがジャニーズ事務所を抜けた時のように、慣れ親しんだポジションを離れて環境を変えるとき、アイドルやアーティストたちは「自分にとって、ファンとは?」という問いと向き合うのでしょう。

ジャニーズ事務所 ©AFLO

 たとえば、渋谷さんに先んじてジャニーズ事務所を退所した稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんら「新しい地図」の3人は、ファンを“NAKAMA”(仲間)と名付けてくれました。この呼び名には、「どちらが上でも下でもなく、フラットな関係で楽しいときを過ごそう」という彼らのスタンスが、見てとれます。

「新しい地図」の3人 ©AFLO

 渋谷さんはソロになった際、「人生初のバックパッカーというのをやってみようと思い」、「ドンキで買った自分ぐらいあるデッカいリュック」と「自分よりは小さいアコースティックギター」だけを持って東南アジアの国々を旅したそうです。

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「世界中を旅しながら色々なもの事に触れて、見て、感じて、作曲して」、ときには現地の人と同じ服装をして人混みにまぎれてみたりもしたと、公式ブログで伝えてくれました。

 渋谷さんはこの旅で、自分の中で「こうだろう」と決めつけていたことが崩れていったと後に綴っています。たとえば「(長く内戦や武力衝突が続いていた)カンボジアの人たちに対して、大変とか、かわいそうとか、そういった感じで思って」いたけれど、実際に現地の人々と接してみると「カンボジアの人たちは、幸せそうだと感じた」といいます。

 同じ国で、同じ言葉を喋る人どうしが争うのはなぜなのか、平和=幸せなのか、“心”とは、“ニンゲン”とは何なのか。初めての場所で感じるさまざまな問いに目を向けながら、彼はアーティストとして、今一度生まれ直したのかもしれません。

渋谷すばる本人インスタグラムより

 渋谷さんはのソロデビューアルバム「二歳」には、「ワレワレハニンゲンダ」という曲が収録されています。渋谷さんはニンゲン。ファンもニンゲン。ニンゲンが生まれ落ちたとき、最初に結ばれている関係は“親子”であり、だからこそ彼は愛してやまないファンに“親”という最高の絆を与えてくれたのではないでしょうか。