「ドラッグがカッコいいなんて言うやつは、最悪のクソッタレだよ。」
この筆者によれば、治療法のひとつは単に会話することだという。ほんとうは胃病と同程度のセクシーさしか持ちあわせないものから神秘性をはぎとれば、精神的苦痛に対する一般の人々の態度は正しい方向へと大きな一歩を踏み出すはずだ。そうすれば、鬱状態をファッション宣言だと思っているような人間をなくすこともできるだろう。その手の輩は、ほんとうの意味で鬱と闘い、そこから逃れたいと思っている人を傷つけているだけでしかない。コベインは鬱や気管支炎や胃痛と闘い、自分で治療しようとクスリを使い、深刻な薬物中毒になっていった。そういう要素が彼を早すぎる死へと誘い ざなった。確かに、企業という装置に抗うパンク・ロッカーの最終戦争を思い描いていたほうが、ずっとロマンティックなのだろう。しかし真実はそんなところにはない。私たちが学ぶべき大切なことは、真実ではないか。27クラブの美化をやめること。早すぎる死の神話や礼賛が広がるのを食いとめること。私たちは、早すぎる死の原因がロマンティックでもセクシーでもないことを知るべきだ。礼賛するなら、死ではなく、生をこそ礼賛しよう。
ついでながら、コベインもきっと同意してくれると思う。彼は死へと誘惑するようなクラブにはいっさい加担しなかった。悪魔と闘ってはいても、それを美化しようとはしなかった。「ドラッグをやることに関して、わざわざ自分からあれこれ言ったことはない」と彼は言った。「ドラッグがカッコいいなんて言うやつは、最悪のクソッタレだよ。地獄があったらきっと落ちるね」。それでも人々はコベインの意志に反して、ドラッグを使う彼をカッコいいと崇めた。キム・コベイン(編集部注:カート・コベインの妹)はこう回想している。「カートがいちばん恐れてたのは、自分がきっかけになったり影響したりして、子供たちがヘロインをやるんじゃないかってことでした」。だからこそモーゲン(編集部注:ドキュメンタリー映画監督。カート・コベインについてのドキュメンタリー『Cobain モンタージュ・オブ・ヘック』を監督した)は、傷だらけになりながらまどろんでいる、ゾッとするようなコベインのホームビデオ映像を何度か作品に挿入したのだろう。彼は言う。