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子ども同士の絆、思春期の“痛み”を描く名作『スタンド・バイ・ミー』、裏にあった「悲しすぎる実話」

2021/05/28

genre : エンタメ, 映画

「初めて死んだ人間を見たのは12歳の時だった」

 そんなドキッとするモノローグで物語が始まり、主人公となる少年4人がひと夏の冒険として選ぶのは死体探し。『シャイニング』や『IT “それ”が見えたら、終わり。』などで知られるホラー文学の大家スティーヴン・キングの小説の映画化作品ならではといった『スタンド・バイ・ミー』だが、1987年の公開から青春ドラマの大傑作として愛され続けている。

※以下の記事では、『スタンド・バイ・ミー』の内容や結末が述べられていますのでご注意ください。

“あの頃の自分”と重ねてしまうことができる映画

 毎日のように木の上に作ったアジトに集まる、、12歳のゴーディ(ウィル・ウィートン)、クリス(リバー・フェニックス)、テディ(コリー・フェルドマン)、バーン(ジェリー・オコネル)。ジュニアハイスクール(中学校)への進学を迎えようとする夏の終り、バーンが「死体を見たくないか」と持ち掛ける。行方不明になっている少年の死体が線路そばの森に横たわっていると、彼の兄と仲間が話しているのを耳にしたのだ。

 誰よりも先に死体を発見すればヒーローになれると線路を歩いて探しに出るゴーディたちだが、町の不良エース(キーファー・サザーランド)らも死体を見つけようと動き出す。

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 時代は1959年。場所はオレゴン州(原作ではメイン州)の小さな町。馴染みがあるとは言いがたい舞台設定だが、なぜか映し出されるものすべてに猛烈なノスタルジーを感じてしかたがない。

 大きく太い枝が張った木の上に建てられたアジト。アジト内に転がるコーラの空き瓶、置かれたラジオ、タバコを吹かしながら興じるトランプ遊び。陽炎がゆらめくなか、どこまでも続く線路を歩く少年たち。死体探しという、子供にとっては破格の冒険。

 木の上のアジトなどなかったし、タバコを吸ったこともないし、線路に入って歩いたこともない。もちろん、死体を探しに行ったことなどあるわけがない。どちらかといえば、郷愁ではなくて「こんなことやってみたかったな」という憧憬なのかもしれない。でも、拡大解釈すれば、まったく同じではなくても似たような経験はしたことがあるだろう。

 学校が終わると、みんなで集まった友だちの部屋。そこで持ち寄ったうまい棒やポッキーを貪り食いながらファミコンに興じ、早売りしている店で誰かが買ってきた「週刊少年ジャンプ」を貪り読む。陽炎がゆらめくなか、チャリンコで急勾配の坂を猛スピードで駆け下りる。

 チャリンコで行けるとこまで行ってみる、たいしたことないがそれなりにワクワクする冒険。そんな思い出がひとつふたつあり、仲の良い友だちが数人いただけで“あの頃の自分”と重ねてしまうことができる映画なのだ。